2019 Fiscal Year Research-status Report
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17K05331
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
池畠 優 広島大学, 工学研究科, 教授 (90202910)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | enclosure method / 障害物逆問題 / 偏微分方程式に対する逆問題 / heat equation / wave equation / thermoelsticity |
Outline of Annual Research Achievements |
熱弾性体の方程式系で記述される、物体内の空洞の幾何学的情報を物体表面上の有限時間にわたる一組のデータから抽出する問題について、囲い込み法を用いて考察した。その結果、任意に与えられた点を中心とした未知の空洞を含む最小の球を求める公式を確立した。その方法は、次の三つのステップ(1)-(3)からなる。(1)与えられた点を共通の中心とする、物体を囲む二つの球の間のシェル状領域上に台を持つ初期条件を与えその下で空間全体で熱弾性体の方程式系を解く。(2)(1)で得られた解から物体表面上に与えるノイマンデータを構成する。(3)(2)で構成したノイマンデータを入力として得られた物体表面上の応答から囲い込み法における指示関数を計算してその漸近公式から求める最小の球の情報を引き出さす。この方法は単一の入力を使うだけであり前年度に提出した時間反転不変性に立脚した方法と比べても極めて単純であり、その単純性故、時間反転不変性を持たない熱弾性方程式系やもともとの熱方程式などを含むより広範囲な方程式で記述される障害物逆問題に適用可能な方法と期待される。Maxwell方程式系に対する2層問題の考察にたいしては、まず順問題の調査をし既存の研究でカバーされることは確認した。囲い込み法の基礎となる不等式系についてはその成立は確認したが従来と異なり微妙な部分が見られる。これは電場と磁場の非対称性に起因すると思われるが引き続きその微妙な部分の意味について考察しなければならない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
囲い込み法において、物体境界上での入力として与えるノイマンデータを、時間反転不変性という限られた性質を用いることなく、シェル状の台を持つ初期条件のもとで支配方程式を全空間で解きその解を用いて生成するという極めて簡潔かつ単純なアイデアが見つかった。 これは当初予想しなかったことであり、この考えの今後の展開が大いに期待される。 またMaxwell方程式系に対する2層問題における時間領域囲い込み法の展開については、その基礎となる不等式系を得たがその応用についてはさらなる考察が必要である。以上よりおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
波動現象等を記述する時間に依存するさまざまかつ重要な方程式(系)において時間領域における囲い込み法のさまざまな可能性を徹底的に追求する。
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