2018 Fiscal Year Research-status Report
非線形分散型方程式に現れる平面進行波解の安定性解析
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17K05332
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
水町 徹 広島大学, 理学研究科, 教授 (60315827)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 2次元浅水波モデル / 線状孤立波 / 安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は空間2次元のBenney-Luke方程式の線状孤立波の安定性を証明した。Benney-Luke方程式は水面波方程式の長波長近似モデル(Boussinesqモデル)の一つである。昨年度に研究したKP-II方程式は波が主に単一の方向(x軸正の向き)に進むことを前提として導出される空間異方性のあるモデルであるのに対して、Benney-Luke方程式は空間等方的なモデルであるといった特徴がある。Benney-Luke方程式は表面張力が弱い状況に相当するパラメータ領域において、KP-II方程式の場合と同様に線状孤立波が他の波と分離することは平成28年度におけるBenney Luke方程式の線状孤立波の線形安定性の研究から推察されるが、Benney-Luke方程式の線形部分は高周波においては空間2次元の波動方程式であるため、線状孤立波の変調する様子を進行波座標系で記述する際に現れる移流項の扱いが3階の方程式であるKP-II方程式より難しくなるといった技術的な難しさがあった。今年度の研究で、Benney-Luke方程式の線状孤立波の摂動による位相のずれは、線状孤立波に加える摂動が重み付きの関数空間において十分小さければ、時間変数と横断変数に関して一様に小さいということが分かり、進行波座標系も(横断変数や時間変数に依存しない)自明なものを選ぶことができるため、上記の困難は実質的には生じないことが分かった。また線状孤立波の周りでの解のエネルギーは線状孤立波などの非有界部分を除いておいて、さらに線状孤立波のパラメータが満たす永年項条件を使ってエネルギー密度関数を書き換えると、ほぼ保存していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全空間において線状孤立波の安定性が証明された非線形分散型方程式は完全可積分系のKP-II方程式だけであったが、本年度の研究により、KP-II方程式と類似の性質を持つ完全可積分系でない空間2次元の長波長近似モデルの例を一つ付け加えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2次元格子方程式に現れる線状孤立波や空間3次元の水面波方程式の弱非線形・長波長領域における線状孤立波など、空間高次元の非線形分散型方程式に対して、線状孤立波の線形安定性・非線形安定性の研究を進める。
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Causes of Carryover |
大学の講義スケジュールが昨年度までとは変わったために出張をすることが難しかったことと、海外の研究者を科研費とは別の経費で招へいしたことにより、次年度に繰り越すことになった。令和2年度には海外から研究者を招聘する予定である。
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Research Products
(4 results)