2019 Fiscal Year Research-status Report
pラプラシアンの固有値問題と関連する楕円積分の研究
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17K05336
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
竹内 慎吾 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (00333021)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | pラプラシアン / 一般化三角関数 / 加法公式 / 倍角公式 / レッドヘッファー不等式 / レム二スケート関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の本研究課題の研究成果は以下のとおりである。(I) 一般化三角関数の応用 (II) 一般化三角関数の倍角公式。なお、一般化三角関数とはpラプラシアンの固有関数のことである。
(I) について。三角関数に関する多くの有名な不等式が一般化三角関数を用いて一般化されているが、レッドヘッファー不等式についてはこれまで(1パラメータも含めて)その方向の研究がなかった。これはこの不等式が正弦関数の無限積展開を用いて証明されるのが標準的で、対応するものが一般化三角関数では知られていないことに起因すると思われる。研究代表者は院生との共同研究で、無限積を用いない方法でこれを一般化することに成功した。また、Melkonian 氏との共同研究では、シンク関数についてのディリクレ積分やその周辺の公式を2パラメータの一般化三角関数を用いて一般化し、さらに Ball の積分不等式に関連するその L^m ノルムの m に関する漸近展開を得た。これは通常のシンク関数に関する Borwein-Borwein-Leonard (2010)、Kerman-Ol'hava-Spektor (2015) の結果の一般化にあたる。これらの成果はそれぞれ論文にまとめて現在投稿中である。
(II) について。一般化三角関数は三角関数の一般化であるから、加法公式や倍角公式のような等式が成立するのかどうかは極めて興味深い問題である。研究代表者はすでに公式が知られているパラメータをすべて調べ上げ、そのうえで新たにいくつかのケースについて公式を得た。特にラマヌジャンがレム二スケート関数を拡張したある種の関数について、大同大の篠原氏(2017)は偶然にも公式を見つけていたが、研究代表者はそれに発見的な証明を与え、さらにそれを基礎として別のパラメータに関する公式を導いた。この成果は論文にまとめて現在投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は開拓されたばかりの分野で解くべき問題が山積しているが、自明ではないことが着実に解明できている。そして一筋縄では解決できない問題も顕在化し、分野として健全であると思う。また得られた成果を研究集会で報告するとそれなりに反響があるので独善的なものではないと思われる。したがって研究は順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、一般化三角関数(pラプラシアンの固有関数)の性質、主に数論的性質について研究し、その成果を広く発表していく。pラプラシアンに関する従来の研究は、ラプラシアンで成り立つことがpラプラシアンの場合にはどのように変化するのかを調べるのが常である。一方、我々の研究方法によれば、異なるpに関する二つの固有関数(一般化三角関数)の関係(倍角公式)を軸にして、二つの方程式の間に潜む横断的な関係を捕まえることができる。本研究課題では、このような新しい視点によるpラプラシアンの研究と同時に、既知の問題への一般化三角関数の応用を並行して進めていく。
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Causes of Carryover |
予定していた本が買えなかったため。
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