2017 Fiscal Year Research-status Report
再生核理論の応用と工学的・医学的問題への展開と実装
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17K05357
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
松浦 勉 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (80181692)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 三郎 群馬大学, その他部局等, 名誉教授 (10110397)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 再生核理論 / 逆問題 / 画像解析 / 計算アルゴリズム / 医用画像 / ニューラルネットワーク / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は我々のこれまでの(数学としての)再生核理論の研究成果を工学・医学における具体的な問題レベルで展開して,さらに工学,医学,産業界等に寄与すべく実装の段階まで進めることである. この課題に関連する医学的な課題として,平成26年度より群馬大学医学部の松崎利行教授,廣村桂樹准教授と糸球体細胞の変性をパターン認識・パターン学習によって捉える研究,平成27年度からは群馬大学医学部の向後晶子講師と蝸牛有毛細胞の組織化過程の定量化に関する研究,平成29年度からは首都大学東京・人間健康科学研究科の白川崇子教授とCT画像からの肺気管支分岐角度の自動推定手法の開発,高次脳活動中の高濃度酸素吸入による脳血流変化を捉えるためのNIRS+fMRI同時データ解析方法の研究を始めた.これらの先生方との共同研究では既に幾つかの成果が上がっており,作成した解析プログラムは群馬大学医学部でのデータ解析や学生教育に使用していただき,今後の改良のために意見を聞いている. また,工学的な問題への展開としては,太陽誘電株式会社と電波強度からの室内位置推定の問題,DOWAエレクトロニクスとソーラーパネル性能の電極銀粉形状依存性の問題(画像処理と統計解析),IHIと実験パラメータ変化によるエンジン内流れ場変動の解析など,企業との共同研究も始まっている. 以上の研究課題に関しては,卒業研究課題,修士研究課題として学生と共に取り組み,本報告書の「10.研究発表」に記したように,具体的な成果が出始めている.また,開発した解析プログラムを現場で試用していただき,モニターしてその結果をフィードバックしていただいている. 数学的な研究としては,再生核の拡張理論とそれから派生した「ゼロ除算」の研究を継続しており,その成果は国際学会発表3件,国内学会(主に日本数学会)6件,投稿論文3件として公表している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の初年度の計画として(申請書に記載したものとして),「工学,医学分野における逆問題群の整理,困難の要因の解明」と「解構成アルゴリズムの開発」を予定していた.これらに関連して「10.研究発表」に列挙したように順調に成果があがっていると考える. 医学部との共同研究は順調に進んでおり,蝸牛細胞変成の定量的評価法に関しては,不鮮明細胞画像からの細胞膜検出に新しい(深層学習を適用する)方法を適用する論文を作成中である.更にこの方法をプログラム化したものを群馬大学医学部で使用していただいている.また糸球体細胞の形態解析については,現在博士課程1年生との共同研究を進めており,パターン分類に関して2段階学習法という新しい手法を考案して成果を出しつつある.この成果を盛り込んだ投稿論文も作成中である.気管支分岐角度の自動推定の研究に関しては,逆問題としていくつかの困難な部分が見つかり,まだ十分な精度を得る段階にはないが,現在細部の改良を検討中である. 工学的問題については,SEM画像からの銀粉形状やその粒径分布に関しては,数学的モルフォロジの手法を導入した解析プログラムを作成して,これを現場で試用していただき,そのモニター結果を頂いている.位置推定問題に関してはいくつかの手法(統計的パターン認識,ニューラルネット)を考案して解析・推定しているが,現場で要求される精度には至っていない. 数学的研究に関しては,再生核理論の逆問題応用を意識した「ゼロ除算」の研究成果と,再生核とはそもそも何かという考察を6件の学会発表として公表した.また,これらの研究のまとめとして,平成30年度にイギリスから専門書を刊行すべく準備中である. 以上のことから,我々の研究は平成29年度の当初目標に対して概ね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
2年目である平成30年度は,既に医学部や企業に提供している解析プログラムに関して,その使用状況や要望をお聞きして,更に現場で(高速化も含め)使い勝手の良いものに改良していく考えである.また,まだ十分精度が出ていない問題(位置推定問題,気管支分岐角度の自動計算)に関しては,解析手法の改良や深層学習の導入,他の解析手法の開発などを進めたいと考えている.流れ場解析に関しては,IHI,群馬大学理工学部機械知能システム理工学科の石間研究室,松浦研の博士学生を含めた打合せを行い(既に,以前取得された基礎データを元に方法論は考察中であるが)現実のデータからどのくらい有用な情報が抽出できるかという問題に対して,これまで積み上げてきた解析経験やノウハウを生かしながら解析方法を開発して挑戦したい. 更にこれらの具体的問題で成果が出た場合(「10.研究発表」に記した口頭発表の内容も含め),いくつかの論文にして,我々の方法の有用性を現場の方々を含め,世に問いたいと思っている. 再生核とこれに関連する「ゼロ除算」の研究は,日本数学会においても認知されつつある.今年度はこれまでの研究を(多くの実例を含めて)まとめたものがイギリスより出版される予定である.これによって「ゼロ除算」が合理的で自然な算法であることが,ますます認知されることと期待している.
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Causes of Carryover |
(理由)企業との共同研究が並行して始まったため,予定していた画像処理関連ソフト,統計処理関連ソフトの購入費を企業との共同研究費(これは単年度会計)から出すことができたため. (使用計画)主に画像処理関連ソフトの更新料,Matlab,Mathematicaのライセンス料にあてる予定である.
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Research Products
(17 results)