2017 Fiscal Year Research-status Report
Fast Computation of Birkhoff Average along a Quasi-periodic Orbit and its Applications
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17K05360
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
齊木 吉隆 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (20433740)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 凖周期軌道 / バーコフ平均 / カオス / 数値解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
(決定論的な)力学系のアトラクタは、周期軌道(不動点を含む)、準周期軌道、カオス軌道の3種類に分類される。準周期軌道とは無理数回転と共役なふるまいであり、特に保存力学系における準周期軌道の重要性は良く知られていた。一方、散逸力学系においては乱流発生のシナリオ(Palis-Takensのシナリオ)などで注目されることはあったものの、ダイナミクスの理解のためにはそこまで重要視されていたとは言いがたい。準周期軌道は回転数(無理数回転)、リアプノフ指数(ゼロリアプノフ指数)などを用いて特徴づけられる。これらの量は準周期軌道上(で定義される関数)のバーコフ平均と解釈することが可能である。 準周期軌道上で定義される関数fに対するバーコフ平均に関しては、研究代表者らは、Das博士(Courant Institute),Sander教授(Geroge Mason University),Yorke教授(University of Maryland)らとともに、従来手法の1000倍程度以上(4倍精度の場合)の高速化を実現する重み付きバーコフ平均を提案した。多様なバーコフ平均(回転数、リアプノフ指数、フーリエ級数)、多様な重み関数ωを用いて重み付きバーコフ平均の収束の速さを調べ、各状況において高速化を実現する重み関数ωを模索し、重み関数ω(t)はC^∞級のexp(-1/(t^2(1-t)^2))が多くのケースで有用であることを複数の例で確認した。また、2次元の場合にも有用であることを確認した。一方、回転数が有理数に近い無理数の場合には一般に収束が遅いことが知られているが、その場合の困難さを考察するとともにその場合にも提案した手法による高速化が実現することを確認した。これらの結果をまとめて論文を執筆し、Nonlinearityから出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
凖周期軌道上のバーコフ平均の高速化に関してさまざまな側面の研究(適切な重み関数の発見、高次元の場合の有用性の検証、回転数が有理数に近い状況の解明等)が進み、それらの結果を論文にまとめて出版することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
複雑な形状をした凖周期軌道のバーコフ平均を求めるために、時間遅れ埋め込みを用いた一般的手法を開発して論文にまとめる。また、複素力学系におけるジーゲルディスクの境界付近の滑らかさを、重み付きバーコフ平均を適用して考察する。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた計算機の納入時期が不確定であったため、購入をとりやめた。次年度に購入する予定である。複素力学系のジーゲルディスク境界付近の不変円のバーコフ平均は極めて収束が遅いため、その計算に使用する予定である。また、本研究の共同研究者であるJames A Yorke教授らとの議論を進めるためにUniversity of Marylandを訪問滞在する経費として用いる。
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