2019 Fiscal Year Research-status Report
Fast Computation of Birkhoff Average along a Quasi-periodic Orbit and its Applications
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17K05360
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
齊木 吉隆 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 准教授 (20433740)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 力学系 / 準周期軌道 / 重み付きバーコフ平均 / ヘテロカオス |
Outline of Annual Research Achievements |
力学系の軌道を大きく分類すると周期的,準周期的,カオス的なものがあり,ひとつの力学系に対して,複数種類の軌道が存在する状況はよくある.本年度の研究では,力学系のカオス的アトラクタに不安定準周期軌道が存在しているか否かを判定する目的ならびにその役割を明らかにするために,これまでに本研究課題において研究を推進してきた準周期軌道上重み付きバーコフ平均をヘテロカオスとよばれる不安定次元の異なる周期点が共存する2次元写像に適用した。個々の準周期軌道は当然ながら写像のパラメタ変化に対してロバストには存在しないが、準周期軌道の集合が写像のパラメタ変化に対してロバストに存在することを示唆する数値計算結果を得た.また,その準周期軌道が力学系のパラメタの摂動により,周期軌道に変化し,それを基に周期倍分岐を引き起こして周期倍カースケードを経て従来存在していた不安定方向とは異なる方向でカオス化を引き起こす,すなわちヘテロカオスを生み出すことを示唆する計算結果を得た.この結果は,軌道長Nに対して実用的にも1/N^{20}もしくは1/N^{30}程度の収束オーダーを実現する重み付きバーコフ平均を適用して,従来数値計算による判定が困難であったゼロリアプノフ指数を10^{-15}の精度で得ることに成功したことによってはじめて実現した計算であり,準周期軌道上重み付きバーコフ平均がヘテロカオスという不安定次元の異なる構造が共存する力学系研究の知見の発見に役立った応用例となっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題で推進してきた準周期軌道上バーコフ平均の高速計算アルゴリズムの応用例として,ヘテロカオスと呼ばれる不安定次元の異なる周期軌道が共存する具体的な力学系を考察して,力学系の新たな知見を得ることに成功した.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に行った不安定準周期軌道をもつヘテロカオス写像に関する重み付きバーコフ平均を応用した研究結果を更に推し進めて,写像のダイナミクスにおける準周期軌道の役割を明らかにしてまとめ,論文として発表する.新型コロナウィルス感染症の拡大により,国内外の共同研究者を直接訪問して打合せすることが今後しばらく減ることが予想されるため,遠隔オンライン会議で共同研究を推進する設備を購入して対処する.
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Causes of Carryover |
海外共同研究者との日程調整がうまく行かず,出張が次年度に持ち越しとなった.次年度使用額は主に出張費や共同研究者との遠隔会議の備品購入費として使用する予定である.
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