2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K05375
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
小川 知之 明治大学, 総合数理学部, 専任教授 (80211811)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末松 信彦 明治大学, 総合数理学部, 専任准教授 (80542274)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 振動場反応拡散系 / BZ反応 / オレゴネーターモデル / 光制御BZ反応系 / 大域抑制結合 / 同期振動 / 反位相同期 |
Outline of Annual Research Achievements |
振動場反応拡散系の豊富な解構造と複雑なダイナミクスを大域フォードバックを利用して解きほぐし、多彩さの必然性を明らかにすることを目指している。また振動場化学反応系で、すなわち実験系でも、対応するフィードバックシステムを構築し、理論と実験の融合研究を行うのが本研究課題の目標である。 振動場化学反応として知られるBZ 反応を用いてフィードバック系を考察する上で、光感受性という性質が知られている。BZ 反応は、 ルテニウムという金属触媒を用いる事で、強い光刺激に反応する。光照射の結果、振動が抑えられたり、興奮場では化学進行波が消滅するといった現象が観察できる。この特性を用いてBZ 反応の空間パターンに光によるフィードバック刺激を与えるという研究報告がいくつか報告されている。特に Vanagらは、空間パターンに大域 的な光フィードバック刺激を与えるという実験システムを構築した。そこで彼らは定在波が現れることを報告している。 そこで、BZ化学反応の光制御付き3変数オレゴネーターモデルを用いて2つの振動子の拡散結合系を考える。2つの振動子の興奮因子の値の平均を光刺激としてフィードバックするという、大域結合を導入する。こうすると、フィードバック強度が強くなってゆくと、同位相振動解から倍周期分岐が生じることがわかる。この倍周期分岐が交互振動解に遷移していく。これを実現する実験系を構築し、同様の分岐らしきものを確認することができた。実際には2つの溶液の電位を測定し還元状態を測りその値の平均を光刺激でフィードバックするということを行った。数値的に分岐解析を行うことにより、同相同期と逆相同期の2つの分岐枝がお互いに繋ぎ変えを起こすリコネクションが拡散とフィードバックの競合により現れる事が分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光感受性のあるBZ反応においては光刺激が主に作用するのは抑制因子に該当する物質だと考えられているが、実験的に定在波が現れることが知られている。この定在波を説明するために、昨年度からBZ振動の結合振動子系モデルに単純化して、逆相同期の発生起源を明らかにしてきた。そこでは、同位相振動、反位相振動、交互振動などの特徴的な解が現れることがわかってきたが、今年度は、これらの詳細な分岐構造の数値的追跡を分岐計算パッケージの AUTO を用いて行った。同相同期と逆相同期 の2つの分岐枝がお互いに繋ぎ変えを起こすリコネクションが 拡散とフィードバックの競合により現れる事が分かった。このリコネクションによって、同相同期と逆相同期の双安定な領域がパラメータに依存して変化する事が確認された。また、BZ 反応を用いた結合振動子系の実験システムはいくつか報告されているが、溶液同士が液交換により結合する系を用いて実験システムの構築を試みた。その結果、数理モデルで得られた結果を実験においても再現した。これらの結果は、研究分担者の末松氏と研究協力者の大野航太氏との共著論文にまとめた。
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Strategy for Future Research Activity |
次のような課題を検討していく。3変数オレゴネーターモデルに基づく大域的光制御拡散結合系に現れる同相同期と逆相同期の分岐構造がその他の大域抑制結合拡散振動子系にどの程度普遍的に現れるのかを検討する。特に、BZ反応の2変数縮約系やFHN系などでも同様の構造が見られるのかに注目する。また、拡散結合振動子系の結果を1次元や2次元の空間結合系に拡張して分岐解析を行う。実験的には、円周上に並べたいくつかのBZ振動子で同様の解析を行う。
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Causes of Carryover |
今年度は、数値的な分岐解析と論文執筆を中心に進めた。そのため国際学会発表や大規模な実験系構築を行うことができなかった。BZ振動子の1次元的な拡散結合大域制御系などを視野に入れた、発展的な実験系の構築などを次年度に行う予定である。また、今までに得られた結果の国際学会発表なども行う予定である。
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Research Products
(5 results)