2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K05379
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
加藤 昇吾 統計数理研究所, 数理・推論研究系, 准教授 (60468535)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 統計数学 / コピュラ / 方向統計学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目に当たる平成30年度は、新たな2次元シリンダー上の確率分布の研究を行った。 Johnson and Wehrly (1978)は、周辺分布を自由にとることができる2次元シリンダー上の確率分布族を提案した。彼らの分布族は、確率変数変換により、2次元シリンダー上のコピュラとみなすことができる。彼らが提案した一般的な分布族において、実数上の周辺分布、円周上の周辺分布、コピュラ関数に適当な仮定をおくことにより、我々は2次元シリンダー上の確率分布を得た。そして、この分布について、以下の扱いやすい性質が成り立つことを明らかにした: (a) 確率密度関数を、積分や無限級数などを含まない陽な形で表わすことができる。(b) 実数値変数の周辺分布が実数上のコーシー分布、角度の変数の周辺分布が円周上のコーシー分布となる。(c) 実数値変数を与えたときの角度の変数の条件付分布が円周上のコーシー分布となり、角度の変数を与えたときの実数値変数の条件付分布が実数上のコーシー分布となる。(d) パラメータは5つあり、それぞれのパラメータの解釈が明確である。2つのパラメータは実数値変数の周辺分布の位置と尺度、2つのパラメータは角度の変数の周辺分布の位置と集中度、そしてもう1つのパラメータは変数間の関係の強さを調節する。(e) 2つの(0,1)上の一様乱数を用いて、得られた分布に従う2次元確率ベクトルを棄却なく1つ発生することができる。 上記の性質(a)-(e)は、Johnson and Wehrly (1978)による一般の分布族には成立せず、また、我々の知る限り、他の既存のシリンダー上の分布においても全てが成り立つものは存在しない。今回得られた分布は、その解析的な扱いやすさにより、シリンダー上のデータの統計解析において有用となると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
進捗状況は、「おおむね順調に進展している」とした。これは、交付申請書の「研究の目的」に記載した目的を概ね達成していると考えているためである。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度には、平成29年度に提案した2次元トーラス上のデータのためのコピュラおよび平成30年度で扱った2次元シリンダー上のデータのためのコピュラに対して、Aas et al. (2009)による多変量コピュラ構成法を応用することにより、角度の観測を含む多変量データのためのコピュラを提案することを目指す。そして、提案したコピュラについて統計的性質と推測を考察する予定である。
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