2019 Fiscal Year Research-status Report
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17K05380
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梅田 秀之 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (60447357)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 初代星 / 超大質量星 / 超巨大ブラックホール |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は大きく分けて2種の研究において進展があった。一つは約5万太陽質量の巨大質量星の進化計算である。巨大質量星は進化末期に巨大なブラックホールへと崩壊すると通常考えられている。しかし約5.5万太陽質量の星が爆発を起こしたという先行研究が一つある(Chen et al. 2014)。私も類似の質量の星の進化計算をいくつか行っていたが、爆発した例は見つかっておらず、本当に爆発するものが存在するのか詳しく検証することが急務であると考えた。そこでこの質量前後の星進化計算を細かい質量刻みで多数行い、爆発可能性を詳細に調べた。その結果、ちょうどこの質量のあたりで、水素燃焼後のヘリウム核が一般相対論的に不安定になり始めることを見つけた。その場合、一般相対論的な不安定性のために急速に崩壊するヘリウム核が熱核暴走を起こし、爆発が起きやすい状況が生まれる。質量がこれよりわずかでも小さい場合には、ヘリウム核は一般相対論的に安定で、ヘリウム燃焼が定常的におき、最後に巨大な鉄の核が形成され爆発はしない。一方わずかにでも重い場合には、ヘリウム核の崩壊速度が速く、核反応エネルギーが重力エネルギーを上回ることはなく、爆発はおきない。しかし多数の計算の結果明らかになったのは、爆発に近い状況となる質量の場合も最終的に爆発に至る例がほとんど無いということであった。しかしながら星に弱い回転を与えた1つのケースのみに実際に爆発が起きた。結論として、約5万太陽質量の星は巨大爆発を起こしやすいということが確認され、極めて稀であるが実際に爆発が起きた例を1つ確認した。この結果はNagel, Umeda et al. (2020)として査読論文に掲載予定である。 もう一つ進展している研究は巨大質量星の重力崩壊の輻射流体シミュレーションで、巨大ブラックホール形成とニュートリノ放出の計算を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず約5万太陽質量の巨大質量星の進化計算を行って、その爆発可能性について議論し、査読論文に投稿した。論文は間も無く掲載される予定である。 もう一つ行っている巨大質量星の重力崩壊の輻射流体計算も順調に進展している。大学院生や共同研究者と共に、スーパーコンピュータを用いたニュートリノ輸送を含んだ一般相対論的重力崩壊計算を行っており、現在テスト計算を順調に行っている。この計算に関する共同研究者などとの議論もウェブ会議等を通じて毎週行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
巨大質量星の重力崩壊の輻射流体計算を進めていき、巨大ブラックホール形成やそれに伴うニュートリノ放射の計算を進めていく計画である。この計算にはスーパーコンピューターを用いた長時間計算が必要となるが、その計算のための共同研究者との研究体制は整っており、計算における問題点を一つづつ明らかにし、着実に解決していく。この計算によって、巨大ブラックホールの形成過程を明らかにし、また、それに伴うニュートリノ放射の量を計算することにより、宇宙背景ニュートリノ等への寄与に関する議論を進めていく計画である。
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Causes of Carryover |
初代星形成に関する研究打ち合わせのために3月に10日間程度九州大学へ出張する予定であったが、COVID19の影響で今年度へ延期となった。また今年度から本格的に開始される、超巨大星の崩壊とブラックホール形成計算に用いるため、計算機を購入する予定である。
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Research Products
(5 results)