2019 Fiscal Year Research-status Report
Understanding the accretion phase of star formation
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17K05387
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
町田 正博 九州大学, 理学研究院, 准教授 (10402786)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 星形成 / 原始惑星系円盤 / 磁気流体 / ジェット / 原始星 / 分子雲コア |
Outline of Annual Research Achievements |
星は分子雲コアというガスのかたまりの中で誕生する。また、分子雲コアは重力エネルギーと同等の磁気エネルギーを持つ。従来の研究では磁場(ローレンツ力)は強いが重力に打ち勝つほどの強度ではないという仮定のもので星形成過程の研究が行われてきた。しかし、近年の観測は分子雲コアの磁場が非常に強いことを示唆している。この研究では、初期にローレンツ力によって分子雲コアが支えられるような強い磁場を持つガス雲の進化と星形成過程についての研究を行った。具体的には3次元磁気流体数値シミュレーションコードを用いて星形成前のガス雲を初期条件としてその進化計算を行った。双極性分散を考慮したため磁場が分子雲コアから散逸し重力がローレンツ力よりも支配的になると自己重力によって分子雲コアの中心部が収縮を開始する。しかし、収縮開始前に分子雲コアが持っていた角運動量のほとんどが磁気制動によって星間空間に輸送される。結果として、角運動量が非常に小さく(回転が非常に緩やかで)、磁場が強い環境下で星が誕生する。そのような環境では星周円盤は形成せず、星形成後に、ガスは直接原始星に落下する。しかし磁力線が収縮の過程でさらに増幅し捩じられるために磁場の効果によって弱いジェットが現れる。また、磁気制動の効果によってエンベロープとは逆に回転する星周円盤が形成されうる。この場合は、時計回りと反時計回りの回転を持つジェットが駆動する。このような星形成は従来考えられてきた星形成過程とは大きく異なる。しかし、近年、この強い磁場を持つ分子雲コア中の星形成とよく合致する観測が見つかっている。この研究によって、従来と大きく異なる星形成過程が存在することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究では、星形成の母体となる分子雲コアから星が出来、その後星の周りでの円盤進化やジェットの駆動機構などを解明することを目的としている。前年度までの研究で星が出来てから2000年間の進化を計算し、星形成直後に出来る円盤がその後観測されるような原始惑星系円盤に進化することと、ジェットやアウトフローが星形成過程で自然に駆動することを示した。この結果は、2019年に査読誌 Astrophysical Journalに掲載済みである。2019年度の研究では、磁場が非常に強い場合の分子コアの進化の計算を行い従来とは異なる星形成過程を示した。この研究では、分子雲コアから磁場が抜ける過程、また準静的に収縮する過程が先行研究とよく一致していることを示し、その後先行研究では行われていなかった原始星の誕生と原始星形成後の進化について数値シミュレーションを用いて調べた。その過程で星形成の長年の問題である磁束問題を解決した。分子雲コアの収縮の過程で磁場は増幅される。また、原始星形成後は磁化されたガスが原始星近傍に落下するため、原始星磁場が非常に強くなる。しかし双極性分散を考えると、円盤がある場合には磁束は円盤中で外側に移動し、円盤外縁では磁気交換不安定性により磁束が解放される。また、回転円盤が出来ない場合でも緩やかに磁場が外側に輸送される。さらに磁場が強いガス雲で星が生まれた場合には原始星ジェットが駆動しない場合があることが分かった。これらの結果を論文としてまとめ査読誌Monthly Notices of the Royal Astronomical Societyに投稿し、2020年に掲載された。そのため、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で分子雲コアから原始星が誕生し、原始星の周りで星周円盤が進化する段階までを解明することが出来た。この研究課題では、星に分子雲コア残骸からガスが落下し落下するガスが枯渇するまでの段階を解明することを目指している。太陽型の星の場合、太陽の数倍程度のガスが原始星に落下する。星形成前の分子雲コアはほぼ平衡状態にあると考えらえている。また、分子雲コアの密度が低い質量が大きくなり、ガスの収縮の時間尺度も長くなる。太陽型の星の場合ガス降着段階は10万年程度継続すると考えられる。他方、太陽よりも十分軽い星、例えば褐色矮星は軽い分子雲コア中で誕生すると考えられている。その場合の分子雲コアの密度は高く、時間尺度は1万年程度である。現在までの我々の計算で原始星形成後2000年の形成と進化の計算は既に可能となっている。また、計算コードの改良を行って以前と比較して数倍長い時間の計算が可能である。そのため、褐色矮星程度の星であれば降着段階の最後まで計算出来る可能性がある。また、現在共同研究者とALMA望遠鏡を用いて原始褐色矮星の研究を行っている。太陽型の星の後期段階を全て計算するには非常に長い時間積分が必要であるため困難であるが、褐色矮星程度の星の場合は現在のスーパーコンピュータの性能を考えると十分後期段階の最後まで計算することが可能だと考えられる。そのため、今後の研究では太陽型の星の後期段階全てを解明するための準備段階として、先ず褐色矮星程度の星の形成を考える。褐色矮星が形成されると考えらえれている重力的に束縛された分子雲コアは既に数例検出されているため、観測から得られたガス雲を初期条件として褐色矮星が誕生し分子雲コアのガスが全て星、または星周円盤に降着するまでを計算し、その段階での原始星アウトフローやジェットなどの現象を解明する。
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Causes of Carryover |
3月にドイツで開催される国際会議に招待講演者として参加する予定でしたが、コロナウィルスの感染拡大のため急遽出張をとりやめました。また、同じ3月に日本天文学会に参加予定ですが、こちらもコロナウィルス感染拡大のため会議が中止になりました。これらの理由のため次年度に使用します。
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Research Products
(2 results)