2020 Fiscal Year Research-status Report
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17K05390
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
伊藤 洋一 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 教授 (70332757)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大朝 由美子 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (10397820)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 星惑星形成 / 光学赤外線天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初は、孤立して存在する前主系列星を「わし座」方向に対して探査する予定であった。しかしながら、コロナウイルス感染予防のため勤務形態が変更されるなどの影響により、初夏の観測時期までに準備を整えることができなかった。そこで計画を練り直し、秋冬シーズンにカシオペヤ座方向に対して、孤立して存在する前主系列星を探査した。まず、カシオペヤ方向の銀河面の26平方度に対し、可視光で不規則な変光を示す天体をKISO-GPデータベースから抽出した。これらの天体の中から比較的明るい16天体を、西はりま天文台の「なゆた望遠鏡」と可視光中低分散分光器MALLSを用いて、低分散で分光観測した。積分時間は10分から30分程度で、連続光のS/Nが50程度の比較的良好なスペクトルを取得することができた。その結果、4天体で水素のバルマー線(Hα線)の輝線を検出した。これらは前主系列星であり、その多くはHα線の等価幅が10オングストローム以上の古典的Tタウリ型星である。スペクトル中のナトリウムの吸収線の等価幅から、多くの天体の有効温度は4000K程度であることもわかった。ヨーロッパの位置天文衛星GAIAのカタログから距離を求め、光度を計算した。これらの天体はHR図上で、100万年から1000万年ほどの年齢を持つ天体であることも確かめられた。2天体の周囲5分以内には赤外超過を示す天体がないことも2MASSカタログから確認できた。すなわち、この2天体は孤立して誕生した前主系列星である可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本基盤研究で発見を目指した、孤立して存在する前主系列星の確からしい候補天体を複数個検出した。従って、本基盤研究の目的はほぼ達成できたと考えられる。今後は探査領域を拡大し天体の数を増やすとともに、発見した天体が「孤立して存在する」以外の可能性がないかを検証する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
発見した前主系列星の周囲には、赤外超過を示す天体がないことが2MASSカタログからわかった。しかし、2MASSカタログはKバンドのの限界等級が14等程度と浅い。従って、より軽量の前主系列星が存在する可能性は否定できない。そこで、西はりま天文台の「なゆた望遠鏡」と近赤外線カメラNICを用いて、より深い近赤外線の撮像観測を実施する。また、発見した前主系列星は、天球上で比較的離れた分子雲で集団的に形成され、他の天体の重力摂動により集団から弾き飛ばされた可能性もある。そこで、発見した前主系列星の固有運動を、GAIAのカタログで調査する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染拡大により、発表する日本天文学会年会がオンライン開催となった。このための旅費を使用しなかった。次年度に状況が許せば、日本天文学会年会や各種研究会に実態参加したい。このための旅費として使用する。
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