2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K05408
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大川 祐司 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (10466823)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 弦の場の理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
AdS/CFT対応は弦理論の非摂動的な定義を与える仮説であると捉えることができるが、この仮説においては曲がった時空での閉じた弦理論は、Dブレーンが存在する状況での開いた弦と閉じた弦の理論から導かれる。開いた弦の状態には質量がゼロの粒子も存在し得るが、AdS/CFT対応で考えている状況では開いた弦の自由度を経路積分することができ、穴が開いた世界面を持つ閉じた弦の理論が整合的な摂動論を与えることを指摘した。
さらにWittenにより構成されたスター積を用いた3次の相互作用を持つ開いたボソニックな弦の場の理論においては、on-shell条件を満たす閉じた弦の状態ひとつに対してひとつのゲージ不変な演算子を構成することができるが、N枚の重なったDブレーンが存在する状況で、そのようなゲージ不変な演算子の相関関数の1/N展開による評価は、適切な低エネルギー極限においては穴が開いた世界面を持つ閉じた弦の理論の摂動論を再現することが分かった。
従って、有限のNに対して開いた弦の場の理論を量子化することができれば、重力を含む閉じた弦理論の非摂動的な定式化を与える可能性がある。開いたボソニックな弦の場の理論は一般的にはタキオンが存在して整合的な量子論にはならないと考えられるが、位相的な弦理論への応用や低い次元の理論では量子化が可能であると考えられる例が知られている。さらにタキオンが存在しない開いた超弦の場の理論に研究成果を拡張することができれば、穴が開いた世界面を持つ閉じた超弦理論の非摂動的な定式化を与える可能性があり、来年度以降に研究を進めて行く予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ボソニックな弦の場の理論から超弦の場の理論への拡張をする必要があるが、本研究課題を進めて行く上で極めて重要な進展があったという面では研究は順調に進展している。その一方でこれまでの研究成果の論文執筆に関しては予定よりも遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果により、今後の研究を進めて行く上での方向性が明確になった。超弦の場の理論の構成に関しては国内外で重要な進展が続いており、今年度の研究成果で得られた知見を踏まえて研究会などの関連する研究者と議論しながら研究を進めて行きたい。また、開いた弦と閉じた弦の場の理論について数学者と議論することも有益であると考えている。
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Causes of Carryover |
2018年度から2019年度にまたがる滞在型の国際研究会への参加において、2018年度に使用する海外旅費が予定よりも少なく2019年度に使用する海外旅費が予定よりも多くなったことが主な理由である。また、論文の執筆が遅れていることに伴い、2018年度の年度末の学会での発表を見送って来年度に発表することにしたため、今年度に使用する予定だった国内旅費を来年度に使用することに変更した。
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Research Products
(2 results)