2019 Fiscal Year Research-status Report
非標準的な消滅過程を伴う軽い暗黒物質による新物理探索
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17K05412
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
青木 真由美 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (70425601)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 素粒子論 |
Outline of Annual Research Achievements |
暗黒物質の正体は未知であり、その存在の説明には標準模型の拡張が必要とされる。今年度は、暗黒セクターがQCDライクな構造をもつスケール不変な模型に着目し、特に暗黒セクターの自発的対称性の破れが一次相転移を引き起こす場合について研究を進めた。暗黒物質の候補は、暗黒セクターの対称性の破れに伴って出現する8つの南部―ゴールドストンボソンである。ここで扱う模型における暗黒物質および一次相転移で生成される重力波については、代表者らの先行研究でも議論されているが、本研究ではそこでは注目されていなかった、新たに加えたスカラー粒子がヒッグスボソンよりも軽いかあるいは同程度の質量を持つようなパラメーター領域に注目している。そのような場合では、解析の結果、暗黒セクターが持つベクトル型のSU(3)フレーバー対称性がSU(2)×U(1)対称性に破れるシナリオにおいて暗黒物質の残存量が説明可能となることがわかった。また、このシナリオでは8つの南部―ゴールドストンボソンのうち7つが安定となり暗黒物質となるが、初期宇宙における対消滅過程では、暗黒物質が対消滅をして別の重い種類の暗黒物質を生成する非標準的な対消滅課程が重要となることが明らかとなった。 一方、暗黒セクターで起こる一次相転移は重力波を生成する。本研究で注目しているパラメーター領域では音波による重力波への寄与が抑制される可能性があるため、その抑制効果を取り入れて重力波のシグナル-ノイズ比等の解析を行なった。その結果、将来の宇宙重力波望遠鏡で重力波の観測が可能であることがわかり、QCDライクな暗黒セクターを伴うスケール不変な模型を検証する手段となることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
QCDライクな構造をもつ暗黒セクターの暗黒物質や重力波について論文にまとめ、査読付き雑誌に発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果をもとにして、さらに非標準消滅課程を行う暗黒物質の可能性を探っていく。
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Causes of Carryover |
参加を予定していた学会の現地開催中止や研究会の中止が重なり、2019年度の未使用額が生じた。次年度の研究打ち合わせの旅費等に充てる予定である。
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Research Products
(5 results)