2020 Fiscal Year Research-status Report
非標準的な消滅過程を伴う軽い暗黒物質による新物理探索
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17K05412
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
青木 真由美 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (70425601)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 素粒子論 |
Outline of Annual Research Achievements |
様々な観測によって暗黒物質の存在が確認されているが、素粒子標準模型の枠組みではその正体を説明することが出来ない。一方で標準模型には、ヒッグス粒子の質量スケールがプランクスケールに比べてなぜ何桁も小さいのかという階層性問題が存在する。この問題を解決する可能性の一つとして、近年、右巻きニュートリノを新たに導入し、その量子補正によってヒッグス粒子の質量スケールを導き出す方法が提案された。ヒッグス場の質量項がゼロとなる古典的スケール不変な理論の枠組みでは、この方法が機能するために必要とされる右巻きニュートリノの質量は10^7~10^8GeV程度になることが知られている。そこで、暗黒セクターがQCDライクな構造をもつスケール不変な模型において、この方法を適用した。右巻きニュートリノは、暗黒セクターにおけるスケール不変性の破れによって、新スカラー場が真空期待値を持つことで質量を獲得する。一方で、暗黒セクターの破れに伴い出現する8つの南部―ゴールドストンボソンは暗黒物質の候補となり、それらは右巻きニュートリノと同程度の大きさの質量を持つことが期待される。このシナリオでは暗黒物質の相互作用が小さいことから、通常の熱的残存ではなく、非熱的残存が重要となる。右巻きニュートリノと暗黒物質、新スカラー場のボルツマン方程式を解くことによって、暗黒物質の非熱的残存量を求めた。それにより、暗黒物質と新スカラー場が右巻きニュートリノよりも2桁程度大きな質量を持つ場合に、観測値と矛盾しない暗黒物質の残存量が得られることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
隠れたQCDライクな構造をもつスケール不変な模型において、新たな暗黒物質の残存可能性を指摘することができた。また、研究成果を論文にまとめ、査読付き雑誌に発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
暗黒物質や右巻きニュートリノの大きな質量スケールが、インフレーションなどの高エネルギー物理と関係する可能性について探究する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、参加を予定していた国際会議が中止となったり、研究打ち合わせの出張などが困難になったりしたことから次年度使用額が生じた。これらについては、国内外における研究打ち合わせや研究発表のための旅費にあてる計画である。
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Research Products
(3 results)