2017 Fiscal Year Research-status Report
マトリックスモデルを用いたラージN質量スペクトルの研究
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17K05417
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大川 正典 広島大学, 理学研究科, 教授 (00168874)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 素粒子理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)SU(N)非可換ゲージ理論は一般に複雑な構造を持っているが、Nを無限に持っていった極限で、4次元格子上で定義された理論は、時空の自由度を持たないツイストされたマトリックスモデルと同等になり、構造が簡素になる。申請者とGonzalez-Arroyoは過去数年間にわたり、マトリックスモデルを用いてハドロン質量を計算する問題に取り組み、4次元的に広がりをもつ実空間相関関数を直接計算する代わりに、まず運動量空間での2点相関関数を求め、フーリエ変換により実空間相関関数を求める方法を昨年度までに確立した。本研究の目的は、この新しい計算法を用いて大規模数値シュミレーションを行い、ラージN極限での質量スペクトルを決定することである。特に平成29年度は、ゲージ場だけの動的効果を取り入れた't Hooft極限での計算を行った。この理論ではカイラル対称性は自発的に破れ、クォークは中間子の中に閉じ込められていると考えられている。連続極限を取るために、3つの格子間隔での計算を行い、種々の中間子の基底および第一励起状態の質量スペクトルを研究した。有限のNの理論には、クエンチカイラルログといわれる非物理的なクォーク質量依存性があるが、N=289で行った本研究では実質的にラージN極限での計算がなされており、クォーク質量依存性にクエンチカイラルログの効果は見られなかった。得られた中間子質量のクォーク質量依存性は、カイラル対称性が自発的に破れていることを示している。 2)ツイストされたマトリックスモデルの摂動論を用いて、ラージNゲージ理論のウィルソンループを相互作用の4次までで計算する研究を行った。 3)ツイストされたグラディエントフロー法を用いて、SU(3)純ゲージ論のΛパラメーターを非摂動論的に決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究の主目的は、ゲージ場だけの動的効果を取り入れた't Hooft極限での中間子質量の計算を行うことであり、研究は予定通り順調に進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終目的は、アジョイント表現のフェルミオンを持つSU(N)ゲージ理論のラージN極限での中間子質量の研究である。物理的に重要なフェルミオン数が2の理論は、赤外固定点を持つコンフォーマル理論であると考えられており、平成30年度はこの研究を進める。
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