2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K05419
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大河内 豊 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (40599990)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 真空崩壊 / 準安定状態 / 弦理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
準安定状態の崩壊に関する触媒効果についての研究を引き続き行った。特に超弦理論への応用を試み、KKLTモデルとして知られる弦理論においてドジッター真空の構成に成功したモデルの触媒効果を調べた。その中でD3ブレーンを特異点が解消されたサイクルに巻きつけることで、ダイオニックな粒子として振る舞う物体が存在することを理解し、それが触媒となりうるかを調べた。このブレーンと真空崩壊を引き起こすバブルが束縛状態を構成したものが、真空崩壊を早める可能性を指摘し、具体的に数値的に崩壊率を計算した。その結果、粒子の電荷や磁化の大きさによって真空の崩壊が早まることがわかった。この結果は棚橋氏(九大)と中井氏(ラトガース大)と共に共同研究としてまとめ、アーカイブに投稿した。現在、国際誌に投稿中である。またその結果を、ギリシャコルフ島で夏に開かれた国際研究会"Corfu2018"と、マイアミで冬に開かれた国際研究会"Maiam2018"で発表した。現在この結果から得られた経験をもとに、より現実に近づけた有限温度系や有限密度系への拡張も試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現実の世界を記述する真空を弦理論で矛盾なく考えるためには、ドジッター時空の構成が必要不可欠であり、それが実現されているとKKLTモデルにおいて、我々のアイディアがうまく適応できることがわかったことは、より現実に近い真空においても同様のメカニズムが機能するだろうと考えられ、その点で順調に進んでいると考えている。また、弦理論における標準模型の構成にはよくWarped compact化が使われるが、その場合触媒効果は局所的なブレーンの振る舞いにより記述できるため、全体の多様体の情報を知る必要がないこともわかった。これは他の多くのモデルにも同様に適応できることから、今後も広く使える可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は論文として成果をまとめることができたが、一方で、予定していた国際研究会に一つ参加できなかったので、結果の公表が十分にできなかった。来年度はその分も含めて研究発表する予定である。また、今回の研究の流れから、新たに見つかったブラックホールを触媒とする真空崩壊も現実世界において重要な役割をするので、これも合わせて研究を進めて行く予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた国際研究会に参加できず、その分の旅費を次年度に繰り越すこととなった。また、関連図書の購入を行う予定であるが、現時点では数値計算を優先して行っており、文献からアイディアや突破口を探す作業がずれ込んだためである。
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Research Products
(4 results)