2019 Fiscal Year Research-status Report
ゲージ・ヒッグス統一模型からの宇宙物理への予言とプランクスケール物理への拡張
Project/Area Number |
17K05420
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
丸 信人 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (40448163)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ゲージ・ヒッグス統一理論 / 電弱対称性の破れ / ヒッグス粒子 / 大統一理論 / 背景磁場 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、3本の論文を出版、1本の論文が査読中という成果が上がった。特に、指導大学院生との共著論文が3本あったことが特徴的で、研究業績のテーマは3つである。 1つめはゲージ・ヒッグス大統一理論である。ヒッグス粒子を高次元ゲージ場の一部とみなすゲージ・ヒッグス理論では、湯川相互作用がゲージ相互作用で記述されるため、クォーク・レプトンの質量階層性を再現するのが困難である。指導院生との共同研究では、クォーク・レプトンを大統一理論を満たすよう4次元のブレーンに局在させ、重いフェルミオン場の仲介で湯川相互作用を生成するアプローチを用いて、フェルミオン質量階層性を再現することに成功した。 2つめは、以前共同研究者と提案したフェルミオン質量を再現する現実的ゲージ・ヒッグス統一模型で、有限温度における強い1次電弱相転移の可能性を調べた。転移温度が電弱スケールに比べて低いQCDスケールになる非現実的な結果となり、電弱バリオン数生成への応用には模型を拡張する必要性があることを示した。技術的には、ブレーンに物質場を局在させた場合に、1ループ有限温度ポテンシャルの一般公式を導出したことは大きな成果である。 3つめは、背景磁場がコンパクト空間に存在するとき、高次元ゲージ場の余剰次元スカラー場の質量補正に関する研究であり、磁場が入った場合のゲージ・ヒッグス統一模型である。先行研究では6次元量子電磁力学でその量子補正が相殺することが示されていた。標準模型への拡張を見据えると非可換ゲージ理論への拡張は不可避であり、指導院生との研究で一番簡単な6次元SU(2)ヤン・ミルズ理論へ拡張し、同様にスカラー場の質量補正が相殺されることを、陽にグラフ計算をして確認した。この成果により、標準模型を含んだ拡張が可能であることを示せた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
指導院生との共同研究をするなかで、3本の論文掲載は当初の計画以上と評価できる。 特に、磁場が入った場合のゲージ・ヒッグス統一模型の研究が開始できたことは大きく、標準模型を超える新物理の兆候が現れない今の状況において、それと矛盾のない模型構築ができる可能性を開拓できたと思っている。 強い1次電弱相転移の研究については否定的な結果になったが、標準模型も同様の議論で否定的な結果が出たのと同様であり、標準模型を超える物理の模型構築に対して重要な情報を与えるものである。 ゲージ・ヒッグス大統一理論の研究では、懸案のフェルミオン質量階層性が実現できたのは大きな成果で、現実的な模型構築への第1歩となった。 共同研究者である2人の指導院生は、これらの研究成果を学会、研究会、他大でのセミナー等で積極的に口頭・ポスター発表をして、宣伝活動も活発に実施できた。
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Strategy for Future Research Activity |
背景磁場が入ったゲージ・ヒッグス統一模型では、ヒッグスポテンシャル生成のためのメカニズムを探索することを急務とする。この点に関してすでに研究を開始している。現実的な電弱相転移、ヒッグス質量を実現する模型構築を探求する。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスにより物理学会年会が中止になったため、その旅費に計上していた予算を次年度に繰り越した。次回の物理学会の旅費に使用予定である。
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Research Products
(12 results)