2018 Fiscal Year Research-status Report
Nonperturbative studies of superstring theory by numerical simulations of matrix models
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17K05425
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
東 武大 摂南大学, 理工学部, 准教授 (10516785)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 超弦理論 / 行列模型 / 数値解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
超弦理論は10次元時空でのみ整合性を持って定義され、私達の住んでいる空間3次元+時間1次元の4次元時空は残りの6次元がコンパクト化されたものだと考えられている。1996年に提唱されたIKKT行列模型は超弦理論の摂動論に依らない定式化の有力な候補である。IKKT行列模型ではボゾンのエルミート行列の固有値が時空として解釈され、どのような時空が実現するかが模型の力学的性質によって決定される。
時間方向をウィック回転をして虚時間に読み替えたユークリッド型のIKKT行列模型については、フェルミオンを積分して得られるパフィアンが複素数であるため、数値的に扱う上で符号問題に直面する。近年、符号問題を持つ系を解析する手段である複素ランジュバン法が経路積分と等価な正しい結論を与えるための条件に関して、理解が急速に発展した。2017年度は6次元の簡単化した模型について複素ランジュバン法によって時空の生成について調べ、論文arXiv:1712.07562で成果を出版した。
2018年度は、昨年度までの知見を基にして10次元のIKKT行列模型自体に関する複素ランジュバン法による数値解析を行った。6次元の簡単化した模型と比べて有限のN(行列の大きさ)の効果が大きいため、大きな行列の数値計算が要求されるが、2018年度の研究により一定の成果を得ることが出来、ガウス展開法と呼ばれる解析計算の結果との比較検討を行った。この成果について2018年度は国際会議で2件、国内学会で1件の発表を行うことが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度はIKKT模型の複素ランジュバン法による解析において一定の進展があり、国内・国際会議で成果を発表出来た。この成果は、私達の住む4次元時空がどのように力学的に生成されたかという根源的な問題を解決するうえで重要な役割を果たすものである。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究としては、複素ランジュバン法を用いて次の2つの問題に取り組みたいと考えている。
一つは時間方向をウィック回転しないローレンツ型IKKT模型に於ける時空の力学的生成の研究である。これまでのローレンツ型IKKT行列模型の成果は、符号問題が生じないような近似に基づいていたが、複素ランジュバン法によってこのような近似無しで数値解析を行い、時空の生成の仕組みを調べるのは重要な課題である。
また、有限温度のゲージ理論でも、符号問題を伴う化学ポテンシャルや、超対称性を持ったゲージ理論で符号問題を伴う場合を解析することは興味深い問題である。これによって、ゲージ理論の相転移の構造に関して新しい知見が得られると期待される。
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