2018 Fiscal Year Research-status Report
重力波観測における逆問題の定式化および修正重力理論の検証への応用
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17K05431
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
浅田 秀樹 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (50301023)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 重力波 / 重力理論 / 宇宙物理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国のKAGRAを含めた4台の重力波検出器によって、偏波観測が可能となる場合が存在する事を初めて指摘した。これまで、偏波観測には5台以上が必要だと考えられていた。今回の成果は、偏波観測を用いた修正重力理論の実証を加速するものである。また、一般相対性理論が予言するベクトル型の重力の効果は、Gravity Probe B実験により存在が実証されたばかりで、検証の余地が大きく残されている。修正重力理論模型のなかでも、パリティ破れを示唆するチャーン・サイモンズ重力補正を実験的に検証する意義は大きい。チャーン・サイモンズ重力補正に起因する時空構造(計量)を遅い自転をする弱場の天体周りに対して調べた。弱場を解析した理由は、ブラックホールや中性子星のようなコンパクト天体に比べて、弱場天体の方が天体内部の物質分布に依存するチャーン・サイモンズ重力補正が大きくなる利点があり、そのために実証が容易になる可能性があるからである。実際、一様密度球の模型に対して、ポスト・ニュートン近似を用いて時空計量を求めた。得られた結果を用いて、チャーン・サイモンズ重力補正に対して従来法よりも僅かではあるが強い制限を与えることができた(Nakamura, et al. 2019)。さらに、ブラックホールとトポロジー的に異なる種類の強重力場の時空構造としてワームホールが理論的に知られている。特に、回転するワームホール周りの光線の振る舞いを解析的手法を用いて調べた。特に光源および観測者がワームホールから有限の距離にいる状況での光線の曲がり角を論じた。こうした有限距離での計算手法が申請者らにより近年、「ガウス・ボネ定理」を応用することで得られている。この新しい手法を用いて、回転するワームホールによる効果が、次世代の天文観測技術で実証可能かどうか検討した(Ono, Ishihara, Asada, 2018)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
重力波の偏波実験に関する新たな知見が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた偏波実験に関する知見は、基礎理論の段階である。これを実用に向けて更に発展させたい。
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Causes of Carryover |
当初想定した国際会議への出席を見送ったため。今年度は、成果発表および研究打合せのため国際会議への参加旅費に充てる。
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