2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K05443
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
永廣 秀子 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (10397838)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 中間子原子核 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、強い相互作用により支配されるハドロンの複雑な質量スペクトルやその相互作用について、対称性を手がかりにして統一的に理解することを最終的に目指している。まずその手がかりとして、eta'中間子原子核束縛状態の実験的な観測の実現に向けた理論研究を行っている。 当該年度においては、我々の理論的予想に基づき遂行された、欠損質量法におけるeta'中間子原子核束縛状態の探索実験についての、より詳細な結果を学術論文にまとめ、発表を行った。さらに、今後予定される崩壊粒子の同時測定の際に必須となる、eta'の核媒質中での崩壊チャネルについて、より微視的な模型に基づいての理論的研究を行った。そこで、核媒質中においては、N*共鳴の励起によって、二核子吸収の効果が著しく大きくなる可能性を発見した。我々の計算により予言されるこのN*共鳴は、eta' と核子の相互作用が、他の軽い擬スカラー中間子と核子との相互作用とは異なる種類のものであり、従って、他の軽い擬スカラー中間子への崩壊幅が小さいため、現在のところ実験的に発見されていない。この新しいN*共鳴がどのような実験により発見されうるかの詳細な議論を行った。また当該研究によって、この新しいN*共鳴がeta'中間子原子核束縛状態の探索により発見される可能性があることを明らかにした。次年度には引き続き、これまでに我々が構築した理論模型に基づき、崩壊粒子の同時測定も含めた実験方法の提案を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時において、当該年度には、真空中でのeta'に関する現象論的考察、etaとeta'の統一的枠組みでの記述、結合するバリオンの洗い出し、真空中でのeta'の性質と有限密度中における振る舞いのマッチング等を行い、これに基づき、核子多体系としての原子核とeta'との相互作用についての考察を行う予定としていた。当該年度における研究では、統一的枠組みでの理論模型を構築し、eta'現象論的考察を行い、既存の実験データとの比較によるeta'の性質についての考察を行った。また新しいN*共鳴への結合可能性の発見をし、この理論的模型を用いて、原子核の光学ポテンシャルを実際に構築した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに構築した微視的模型を用いた光学ポテンシャルを用いて、崩壊粒子の同時測定を含めた質量欠損法の実験方法の提案を行い、その観測可能性や、実験の実現可能性について、実験研究者と密に議論を行う。具体的には、メーンな崩壊チャネルの決定、崩壊比を測定することによって明らかになるであろう eta'中間子原子核の性質の議論、また、崩壊粒子の同時測定によるバックグラウンドの除去可能性の議論を行う。これらにより、新しいN*共鳴や、eta'の有限密度中での性質変化についての知見を得る。
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Research Products
(7 results)