2018 Fiscal Year Research-status Report
development of an event generator for high energy nuclear collisions based on a microscopic transport model
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17K05448
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Research Institution | Akita International University |
Principal Investigator |
奈良 寧 国際教養大学, 国際教養学部, 教授 (70453008)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 重イオン衝突 / イベントジェネレーター / 微視的輸送理論 / クォークグルーオンプラズマ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の主な成果は、JAMハドロンカスケードと流体を結合した模型を構築したことである。この模型は流体方程式のソース項を通して粒子が流体になるメカニズムをとりいれ、エネルギー密度の高いところは流体素片として時間発展し、そうでない部分はハドロンカスケード模型で時間発展するようにしたものである。この新しい模型は流体とカスケードをダイナミカルに結合することにより時空発展を同時に解いた世界で初めての試みである。膨張してエネルギー密度が低くなったときは、クーパーフライ公式を用いて逆に流体素片を粒子に変換し、時間発展の最後にはすべて粒子となりイベント毎の解析もできる。このアプローチで核子当たり重心系での入射エネルギー3-30GeVの粒子生成を計算したところ、カスケード計算に比べて、ストレンジス生成、反バリオン生成が増大し、入射エネルギー依存性も含めて実験値をよく再現することが分かった。とくにK+/pi+比もよく再現できるようになったことは大きな成果である。また、陽子、パイオン、ケイオン、ラムダ粒子、反陽子などの横運動量分布や縦方向の粒子分布もよく再現できることを示した。 しかし、集団フローに関してはこの流体+JAMカスケード模型は、単純なカスケード模型と同じ結果しか得られないことがわかった。この理由は、カスケード模型で記述される部分は状態方程式の効果がフリーのハドロンガス状態となっているためである。そこで、カスケードで記述される部分を改良して状態方程式の効果を取り入れるために、量子分子動力学 (QMD)を導入できることを示した。 その他には、量子分子動力学を用いて、バリオン数の揺らぎを計算し、ポテンシャルの効果の重要性とクラスター生成の影響を議論した。 JAM2の開発に関しては、JAM1とほぼ同じハドロン間の素過程を導入し、Pythia8をJAMに導入して使えるようにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では流体模型との結合は考えていなかったものの、流体+JAM模型の構築は予想をはるかに越えて粒子生成の入射エネルギー依存性を説明できるモデルであった。流体+JAM模型は、AGS,SPSエネルギー領域(核子当たりの重心系で3-20GeV)の重イオン衝突で生成されると期待されているバリオン密度が高いクオークグルーオンプラズマの時間発展を取り扱えるかなり現実的なモデルであり、今後STARのBESIIやNA61/SHINEにより測定されるであろう新しい実験値の解析や、予定されているFAIR,NICA,J-PARC実験の理解に大いに役立つはずである。 JAM2の素過程はバリオン-反バリオン消滅以外はほぼ導入したが、まだ新しい断面積は導入されていない。Pthia8をJAM2で使えるようにしたのは大きな進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、相対論的平均場をもちいた量子分子動力学(RQMD)の開発と、流体+JAM模型をさらに改良した流体+RQMDを行う予定である。これまでのQMDシミュレーションではほとんどが非相対論的ポテンシャルを用いている。今年度は、相対論的平均場理論に基づいた相互作用をQMDでシミュレーションできるようにしたい。この手法が完成すれば、初めてスカラーとベクトルポテンシャルで相互作用しているN体系の微視的非平衡模型により、重心系での入射エネルギー約30GeVまでの原子核衝突のシュミレーションが可能になる。 また、前年度新しく、流体+QMD模型の開発に着手し予備的な結果を得ているが、今後はこのアプローチをさらに改良していきたい。去年の段階では、非相対論的スキルムポテンシャルを使ったQMDであったが、相対論的平均場を用いたQMDに置き換えることは重要である。
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Research Products
(11 results)