2018 Fiscal Year Research-status Report
宇宙ビッグデータのニュートリノ、暗黒エネルギー研究への応用と理論的基礎研究
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17K05453
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
二間瀬 敏史 京都産業大学, 理学部, 教授 (20209141)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | タイプIa超新星 / 宇宙の大規模構造 / 弱い重力レンズ / 暗黒物質分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
数年後に迫る地上、および宇宙からの大規模銀河サーベイ、高赤方偏移サーベイ、超新星サーベイに備えて、それらのビッグデータから宇宙論にとって重要な情報を得るための予備研究、および基礎研究をおこなった。
一つは素粒子論や宇宙の構造形成に重要な役割を果たすニュートリノの質量と暗黒エネルギーをとりあげた。それらについての制限を得る観測として、宇宙の大規模構造による弱い重力レンズ効果がタイプIa型超新星の「見かけの明るさと赤方偏移関係」に及ぼす影響を研究した。冷たい暗黒物質に基づく構造形成のシミュレーションを利用することで理論的解析を行い、期待される大規模データに適用して、ニュートリノ質量に対しては宇宙マイクロ波背景放射と同程度の制限が得られることが示せた。また今後、この制限をさらに厳しくする方法について、より高赤方偏移観測を行う、低赤方偏移データによる絶対等級の不定性の減少、連星中性子星からの重力波の利用などの提案を行った。暗黒エネルギーに対しては弱い重力レンズ効果を考慮することで、1%程度まで暗黒エネルギーの状態法会知識パラメータを制限できるという従来よりも厳しい制限が得られることを示した。この研究は現在投稿中である。
また我々がすばる望遠鏡で観測した近傍銀河団に対して弱い重力レンズ効果を用いて内部の暗黒物質分布を調べているが、小質量の暗黒物質分布の解析は従来の解析法では不十分であるため、弱い重力レンズ効果が銀河団の背景銀河の形状に及ぼす影響の新たな解析法を開発した。この方法は学術雑誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超新星の明るさと赤方偏移に対する宇宙の大規模構造による弱い重力レンズ効果の研究から、ニュートリノ質量、および暗黒エネルギーへの有意な制限が得られることを示すことができ、論文に投稿中であること。およびこの方法を温かい暗黒物質モデルに適用できることが判明したこと。 さらにこれまで観測していた20個程度の近傍銀河団の弱い重力レンズ解析がほぼ完成したことなどから、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の方法を、超新星の明るさと赤方偏移に対する温かい暗黒物質に基づく宇宙の大規模構造理論による弱い重力レンズ効果に適用することで、温かい暗黒物質に対する質量の制限が得られるかを検討する。
近傍銀河団の暗黒物質分布に対して、従来と違った方法の弱い重力レンズ解析法を適用して、より精度の高い暗黒物質分布を求め、理論的予想と比較検討を行う。
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Causes of Carryover |
予定していた国内出張を日程の都合上、キャンセルした。この出張は平成31年度に行う予定である。
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Research Products
(3 results)