2018 Fiscal Year Research-status Report
暗黒物質ハロー形成進化における質量集積史効果の物理機構解明とハローモデル拡張
Project/Area Number |
17K05457
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
浜名 崇 国立天文台, 理論研究部, 助教 (70399301)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 観測的宇宙論 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年度において作成した暗黒物質ハローカタログの詳細な解析と拡張ハローモデルの理論的枠組みの構築の基礎的研究を行った。暗黒物質ハローの空間分布の相関の強さを、暗黒物質ハローを特徴づける物理量である速度、質量、力学構造パラメーターとその環境の性質を特徴付ける周辺密度の関数として計算して、空間相関の強さが周辺密度に最も強く依存しており、質量、速度、力学構造パラメーターは暗黒物質ハローの質量集積史を通して周辺密度に依存することを確認した。すなわちこれまでに知られていた暗黒物質ハローの相関強度が質量、速度、力学構造パラメーターに依存するという事実は、実は空間相関の強度の周辺密度依存性が主要因であり、周辺密度とそれらの依存性により副次的に作られているということを確認した。このことをハローモデルに組み込むための理論的枠組みの構築のための基礎的研究として、拡張版プレス・シェクター理論に周辺密度を変数として取り入れる拡張を行った。この枠組みにおいては、周辺密度は初期密度場が線形成長したものとして定義されているので、この取り扱いが適切かどうかを数値シミュレーションデータを用いて検証を行った。拡張版プレス・シェクター理論はいくつかの近似に基づいたモデルであるので、その精度や適用範囲には限界があると考えられる。現在、拡張ハローモデルの理論予想と、数値シミュレーションの結果を比較しモデルの妥当性を検証している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度においては、本研究課題の基盤的要素の一つである、数値シミュレーションでもって作成した暗黒物質ハローカタログの詳細な解析を行い、暗黒物質ハローの空間相関の強度が周辺密度に最も強く依存しており、質量、速度、力学構造パラメーターはハローの質量集積史を通して周辺密度に依存することを確認した。これは拡張版ハローモデルの理論的枠組みを作る際の非常に重要な物理メカニズムである。このことをハローモデルに組み込むための理論的枠組みの構築のために拡張版プレス・シェクター理論に周辺密度を変数として取り扱える拡張を行った。昨年度に採用した現象論モデルに比べ拡張版プレス・シェクター理論はより現実的な物理メカニズムを考慮に入れているので、暗黒物質ハローの空間相関に関する物理機構の理解に役立つと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きN体数値シミュレーションを用いて作成した暗黒物質ハローカタログを用いて、拡張ハローモデルの構築を行い、研究目的である暗黒物質ハロー形成進化における質量集積史効果の物理的機構の解明とハローモデルの拡張を行う。数値シミュレーションの規模を拡大し暗黒物質ハローカタログのサイズを増やし、暗黒物質ハローの空間相関の統計制度を高めより詳細な解析を行う。またこれまで解析していなかった質量集積史の情報も考察する。これを用いて拡張版プレス・シェクター理論モデルとの詳細な比較を行い、モデルの妥当性を検証し物理的機構の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
予定していた研究集会参加がスケジュールが合わず実施できなかったため次年度使用額が生じることとなった。翌年度の旅費として使用する計画である。
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Research Products
(3 results)