2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K05458
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
祖谷 元 国立天文台, 理論研究部, 特任助教 (70386720)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 重力波 / 原始中性子星 / 状態方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
重たい星の最期である超新星爆発から、中性子星は生まれると考えられている。中性子星は地上では実現困難な極限環境となっているため、極限環境下での物理を調べる上で非常に良い「実験室」となる。実際、星の密度は原子核飽和密度を優に超える。また、磁場や重力場は太陽系のものよりずっと強くなる。このような特異な天体の内部情報を観測的に得るためには、星震学は非常に良い方法である。これまで、数値シミュレーションを通して、超新星爆発後の特徴的な重力波シグナルの存在が示されて来たが、その物理的な背景は色々議論されて来た。これに対して、我々は星震学的立場からこの重力波シグナルの物理を調べることを行なっている。本年度は、特にこれまでいくつかのグループで採用されて来た異なる原始中性子星の定義に対して、重力波シグナルがどのように変わり得るか、数値シミュレーションの結果と対応するモデルはどのようなものかについて議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超新星爆発後に生まれる原始中性子星からの重力波に対する物理的背景を探るべく、星震学的立場からいくつかのグループが線型解析を行っている。しかし、グループ毎に原始中性子星の定義が異なり、その結果、解くべき問題が数学的に異なっている状況であった。今回、我々は、これまで採用されてきた異なる原始中性子星の定義に対して、それぞれのモデルに関する重力波振動数を系統的に計算した。その結果、原始中性子星の表面を10の11乗 g/cm^3程度と定義した場合における星の基本振動に対応する重力波振動数が、数値シミュレーションからの結果とよく一致することを示した。つまり、原始中性子星からの重力波を観測することで原始中性子星の比較的高密度領域における情報(特に星の平均密度)を引き出せることを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで重力崩壊型超新星爆発からの重力波に関して行われた線型解析は、爆発がうまくいく比較的軽い親星のものがほとんどであった。一方、親星の質量が大きい場合、原始中性子星がコアバウンス後に一時的に生成されたとしても、最終的にはブラックホールに潰れると考えられる。この際、放出するニュートリノのエネルギーが増加し、ブラックホールになる瞬間にそのシグナルも消えると考えらている。そこで、ブラックホールになるような重たい親星からの重力波を線型解析で行い、ニュートリノシグナルと関連づけることで、状態方程式への制限に迫ることを考えている。
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Causes of Carryover |
当初予定していた国内研究会が、例年と異なり研究代表者の所属する国立天文台で開催されることとなり、出張扱いではなくなったため。この残金に関しては、最終年度である2019年度に、共同研究打ち合わせのための国内旅費として使用する予定である。
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Research Products
(10 results)