2017 Fiscal Year Research-status Report
隕石組成との比較による太陽系形成直前に発生したr過程元素合成の解明
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17K05459
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
梶野 敏貴 国立天文台, 理論研究部, 准教授 (20169444)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 原子核(理論) / r過程 / 元素合成 / 太陽系 / 隕石 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的は、急速な中性子捕獲反応過程(r過程)を起こす起源天体環境の解明である。鉄より重い元素の半分以上は未知の爆発的天体現象におけるr過程で生成され、その生成物が初期太陽系に混ざったと考えられる。r過程の天体環境は不明であるが、その有力候補は、中性子星連星系合体(NSM)、磁気回転流体ジェット型超新星爆発(MHDJ-SN)、ニュートリノ加熱型超新星爆発(Neutrino-SN)である。始原的隕石の研究が進み、r過程で生成された長寿命の放射性同位体が太陽系形成時に存在していたことが判明した。r過程モデルの計算結果との比較から、起源天体の正体と発生した年代を明らかにすることが目的である。 研究実施計画は3段階からなる。まず、NSM、MHDJ-SN、Neutrino-SN モデルの構築とr過程元素の組成計算の実行である。次に、それぞれの元素組成結果を、各天体現象の発生頻度に併せて銀河系化学進化に応用する。最終的に、この理論計算を太陽系形成時の放射性同位体組成値と比較することで、どの天体現象がもっとも実測値を合理的に説明できるかを明らかにする。 初年度にあたる2017年度は、NSM、MHDJ-SN、Neutrino-SN モデルの構築とr過程元素の組成計算を実行した。特に、NSMモデルによるr過程については、中性子星連星系合体と考えられるGW170817のマルチメッセンジャー観測からの制限を 最大限考慮し、理論モデルの改善と整合性を検討した。MHDJ-SN、Neutrino-SN モデルは3つの過程の中で最も良く研究されてきた天体現象であるので、放射性同位体組成比に及ぼす様々な理論モデルパラメータへの依存性を詳細に検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、昨年8月に現れた中性子星連星系合体と考えられるGW170817のマルチメッセンジャー観測から元素組成に関する詳細な情報が得られると期待されたが、原理的にそれが不可能であることが観測的に判ってきた。ミクロな原子核ハドロン過程・ニュートリノ過程から3Dで扱うべき一般相対論的流体過程であり、geometry & kinematics があまりに複雑な爆発天体現象であり、且つ、光赤外線波長域の天体観測を定量的に説明するには原子過程および opacity の理解がまだ乏しいからである。現象を解釈するためにまだ多くの不確定要素を残されており、GW170817単独の観測情報量では不十分である。 本研究計画は、このような観測およびその解釈に関する困難が生じる可能性をも予見して立てられた理論研究の計画である。本研究計画に基づいて、銀河化学進化の痕跡を克明に留めているさまざまな年齢および金属量の恒星の組成観測との比較、隕石中に見つかった放射性同位体組成比の分析と併せて、r過程の起源天体環境を研究することの重要性が増してきており、初年度は地に足の着いた研究をキックオフできたという観点から、当研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は、当該研究で構築したNSM、MHDJ-SN、Neutrino-SN モデルとr過程元素の組成計算結果に基づいて、中性子星連星系合体と考えられるGW170817からの光赤外観測結果、および金属量欠乏星の組成観測結果と理論予測との整合性を徹底的に比較検討し、理論モデルを改善した。 次年度は、これらの天体の元素合成モデルを用いて、更に精緻なる元素合成計算を進める。第二段階として、太陽系形成時に存在していたと考えられる放射性同位体組成比の分析を行う。まず、これに必要なClosed Boxモデルによる銀河系化学進化モデルの構築を行い、両者を結合してNSM、MHDJ-SN、Neutrino-SN モデルでのr過程元素の組成計算結果を銀河系化学進化モデルに応用する。理論計算による組成比の値は、隕石中に見つかった測定値を下回るはずである。次に、太陽系形成直前に発生した天体現象による影響をLate Inputモデルで計算する。太陽質量の星間ガスが凝縮を始め、原始太陽系を得て現在の太陽系が誕生したと考えられるため、Late inputモデルとは太陽系形成直前に太陽系近傍で元素合成を含む天体現象が発生し、その生成物の一部が初期太陽系に混ざったとするモデルである。太陽系初期物質に混ざった元素合成生成物の割合と、その天体現象が発生した年代の2つのパラメーターがある。これらを決定するために、複数の放射性同位体組成の元素合成計算結果を用いる。
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Research Products
(26 results)