2017 Fiscal Year Research-status Report
大立体角ガンマ線検出器を用いたハドロン相互作用の解明
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17K05462
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮部 学 東北大学, 電子光理学研究センター, 助教 (10613672)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 光検出器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は大立体角電磁カロリメーターBGOeggと新たに開発するFoward Gamma(FG)検出器群を用いてハドロンの相互作用を解明することを目的としている。 BGOeggは20放射長のBGO結晶1320本からなり、実験室系における全立体角は80%以上に及ぶが前方24度までは全く感度がない。本研究の様にハドロン間相互作用を調べる際には必然的に入射ビームが高エネルギーになり、結果として標的から生成される粒子は前方に集中する。このため前方の不感領域は影響が大きい。また不感領域にガンマ線が逃げるとバックグラウンドを増大させてしまう。 これらを克服するため本研究ではFG検出器を設置する。FGは20放射長のPWO結晶252本から構成され角度分解能2度以下でガンマ線を測定することができる。このFG検出器をBGOeggの不感領域である前方に設置することでアクセプタンスを増大し、バックグラウンド事象を抑制することができる。 本年度は6月に電子光理学研究センターの陽電子ビームラインにおいてFG検出器の性能評価実験を行った。実験では入射する陽電子を50MeVから800MeVまで変化させFG検出器のエネルギー分解能を評価した。また陽電子の入射位置を変えることで位置分解能と角度依存性を初めて測定しエネルギー分解能として2.7%が得られた。 一方FGは電磁カロリメーターのため単体では検出した粒子の電荷が判別できない。そのため今回新たに荷電判別用ホドスコープを設計・製作した。FGおよび荷電判別用ホドスコープは年度末にSPring-8/LEPS2にBGOegg下流にインストールし動作確認及び性能評価を行った。こうして得られた成果は時間分解能と位置分解能の評価を行い当該結果を日本物理学会にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
FG検出器は2003年にSPring-8/LEPSで実験に使用された後放置されメンテナンスされていなかった。そのためまずFG本体を東北大学・電子光理学研究センターに輸送し装置の修正と動作確認を行った。高圧印可システム等の修正を行った後に宇宙線による出力信号が確認ができたので電子光理学研究センターの陽電子ビームラインに於いて動作確認・性能評価実験を行った。全252チャンネルの内5x5の25チャンネルを用いて陽電子ビームで各チャンネルエネルギー較正を行った後、エネルギー分解能・位置分解能・角度依存性の測定を行った。これらの結果により本実験の際の検出器の応答をより正確に評価できる様になった。また幾つかの故障チャンネルが発見されたためこれらの交換を行い年度内にSPring-8/LEPS2実験等へと輸送を完了した。 FG用に新規製作した荷電判別用ホドスコープは厚さ5mmで600mm×70mmないし280mm×40mmの短冊状のシンチレーターを組み合わせて水平・垂直方向それぞれ2層の構成になっている。また荷電判別用ホドスコープは読み出しにMulti-Pixel Photon Counter(MPPC)を用いており、これに独自設計の読み出し回路を製作し信号読み出しを行う。読み出し回路は通常のアンプに加え高計数時に対応するため時定数調整機能を備え8回路が1モジュール化されている。 こうして完成した荷電判別用ホドスコープとFGをSPring-8/LEPS2のBGOeggの下流に設置し2月にテスト実験を行った。FGは読み出し回路の都合から16チャンネルのみを読み出し荷電判別用ホドスコープは全40チャンネルを読み出すことに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の中心検出器であるFG本体と荷電判別用ホドスコープが完成し一応の目標性能を達成したが、今後改善すべき点が見つかったのでそれを解決する。 ・FG検出器 検出器架台の改良をおこなう。現状検出器はBGOegg下流に固定されているが荷電判別用ホドスコープの取り外しや標的交換の際に十分なスペースがとれないためFG検出器を可動できる様にする必要がある。またFG検出器の読み出し回路の整備を行う。FG本体は全チャンネル信号出力が確認されたが、出力信号を分割しADC・TDCを取得する回路類がそろっていない。今年度中にこれらの製作及び調達を行う。 ・荷電判別用ホドスコープ 2月に行われたテスト実験の結果、検出器のレートも高い物でも数10 kHz以下で安定した信号出力が得られていたが解析の結果得られた時間分解能等を見ると予想していた値より悪く特にMPPCから離れると極端に分解能が悪くなることから発生した光が予想よりもMPPCに到達していないと考えられる。このため反射材やMPPCの接着を見直しさらなる性能向上を目指す。 以上の様な改良を行った上で平成30年度後半にはFG及び荷電判別用ホドスコープを全チャンネル読み出せる様にし性能評価実験を1ヶ月程度行いη′中間子やf2中間子の生成量を見積もる。
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Causes of Carryover |
日本物理学会が千葉大学で行われたため国内旅費が予想よりも少なかった。
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