2019 Fiscal Year Research-status Report
Trigger level analysis for measurement of Higgs couplings at LHC
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17K05464
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
江成 祐二 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 助教 (60377968)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 素粒子実験 / トリガー / LHC / ヒッグス / エレクトロニクス開発 / FPGA / ファームウエア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、現時点で不可能であるとされる、チャームクォークとヒッグス粒子の湯川結合定数やヒッグス自己結合定数の測定をLHCにおいて実現するための基盤を、トリガーレベル解析により形成することにある。 データ解析手法の研究については、ヒッグス粒子の結合定数の精密測定においてボトルネックになることはないか、という観点で評価方法を洗い直している。これには背景事象の理解は勿論のこと、信号事象の記述における理論不定性を含めて研究していく必要がある。LHC Higgs Cross section working groupと共同研究していく一環として、ヒッグス粒子の生成過程のモデルにどのような不定性があるかという理解を深めている。この研究の結果は今年度半ばで公開できると考えている。 トリガーレベル解析手法の開発面では、ソフトウエアおよびファームウエア、そしてその運用について、共同研究中のLAPP研究所(フランス)が開発したハードウエアを用い、知見の蓄積を進めている。トリガーレベル解析ではFPGA上でのリアルタイム処理したデータをどのように読み出すか、また物理解析可能な形で記録する手法の確立とその検証が重要である。これらを上記のハードウエアを用いて行っている。この研究成果のまとめとして共同研究者と共著論文を執筆中である。また、実際のシステムでは数百本にも及ぶ光ファイバーを扱うことになる。そのため、ファイバーの分岐や組み換えシステムの試作した。 また、今まで使用してきたハードウエアを使いつつ、上位機種のFPGAでもテストが行えるメザニーカードを製作している。これにより、将来に渡り必要な開発を効率よく行う体制が整えられ、より具体的な計画が提案が行えると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は本研究の最終年度と位置付けて計画を進めてきた。研究をまとめる段階に至っていないために、期間延長を申請し、受理されている。トリガーレベル解析のターゲットであるヒッグスの物理の理解を深めることに加えて、課題として次の3つ、(1)ファームウエア開発、(2)トリガーレベル解析フレームワーク開発、そして(3)読出しに使用するエレクトロニクス開発が本研究の柱である。3つ目のターゲットとして新しいメザニーカードを設計している。長期間の使用に耐えうる回路素子の選定などの遅れにより、期間延長を決定した。このため、進歩状況はやや遅れているとした。 項目(1)および(2)に関しては、新設したカロリメータの読出し回路を用いて順調に進んでいる。FPGA上で物理量の演算を行い、それをヒストグラムとして保存、その結果を読み出すというトリガーレベル解析で不可欠な処理を実行可能であることを示した。研究成果を纏めた論文を執筆しており、本年度中に論文を公開できる見込みである。 また、ヒッグス粒子の生成過程に標準理論を超える結合の有無を調べる解析を行っている。これは将来のトリガーレベル解析のターゲットの一つでもあるヒッグスとcharmクォークとの結合定数を間接的に測定する手法でもある。この解析においては、目標の測定精度で新たに見えてくる系統誤差はないのか、ということを具体的に調べている。この研究の成果も今年中には論文として発表できる予定である。 項目(3)のエレクトロニクス開発であるが、基本的なデザインは出来ている。しかし、実際にトリガーレベル解析を行う時に用いるFPGAでのテストも行えるようなメザニーカードの製作を目指していたため、細かい調整が進んでいなかった。昨年末に実際に使うFPGAがIntelのStratix-10となることが決まり、製作業者とのやり取りを行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を組み合わせ、実際のトリガーレベル解析の具体的な計画を提案することが目標となる。ソフトウエアおよびファームウエア、そしてそのオペレーションについてはかなり知見が蓄積できた。今後の大きな目標としては、今まで進めてきた、改良版メザニーカードを完成させることである。業者とやり取りの中で、細かい修正箇所が数多く必要であることも判明し、実機の製作に至っていなかった。早い段階で修正を終わらせ、製作およびそのテストする段階に漕ぎつけたいと考えている。これにより、具体的な計画の策定とその後の具体的な開発を進める体制が整えられると考えている。 ヒッグス粒子の自己結合定数の感度見積もりにおいても、引き続き系統誤差の評価方法の検討もしていく。信号事象の記述における理論不定性を見直すために行っている解析においても論文として纏めており、今年中の結果公表を目指している。 最終的な感度が足りない場合の対策を練ることも本研究のテーマである。これについても、当初の研究計画の通り、今までの感度見積もり時に考慮していない改善を試していく事が大切であると考えている。cジェット同定への多変量解析の導入や、大統計データ解析の特徴を生かした系統誤差の削減手法を開発していく。 また、最終的にはヒッグスの物理だけに限らず、トリガーレベル解析によって実現可能となる物理解析を提案していきたいと考えている。研究成果は国内および国際会議で発表し、より具体的なステージへ進めるように尽力していきたい。 実際の運用に関しても、より安定性、冗長性を向上させるためのシステムについて、実際のハードウエアを用いたテストを実行しながら検討し、より良いシステムの構築を目指す。
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Causes of Carryover |
ファームウエア開発のテストに使用しているボードが有する機能に加え、将来使用するFPGAを念頭に置いたテストが可能なメザニーカードの開発を行っている。現行のボードおよび新しいFPGAの評価ボードに接続可能な回路の設計を進めている。今回の遅れは新しいFPGAをどの機種にするかという選定に時間がかかり、製作するカードの詳細を決めることが出来ない状況であったことが原因である。昨年末に使用するFPGAとしてIntel社のStratix-10とすることを決定し、現在、仕様の詳細を固めている段階である。 確立した技術を保有した製作会社の選定は済んでおり、既にボード製作のやり取りも始めている。細かい修正箇所も業者に委託することも検討し、今年度で製作後のテストもできるように回路製作を進めている。 予算の残り7割程度を回路製作に必要であると見積もっている。このカードは単価15万円程度になる見込みで、数枚製作する予定である。新しい回路のテストに必要なデバイスやソフトウエアに加えて、光ファイバーの接続テストなどにも全体の2割程度の経費がかかると見込んでいる。残りの1割はボード製作や、研究発表などの旅費に使用する予定である。
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Remarks |
国際会議 Higgs Couplings 2018 開催時のホームページ
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Research Products
(11 results)