2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K05465
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 兼好 東京大学, 宇宙線研究所, 特任助教 (70466861)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 暗黒物質探索 / ラドン |
Outline of Annual Research Achievements |
暗黒物質探索ではバックグラウンドの低減がカギであり、そのバックグラウンドの多くが検出器そのものがもつ放射性不純物からくる。検出器を製作する際にも空気中にあるラドン娘核が付着すれば、半減期が22年と長い210Pbが検出器に残ることになる。この210Pbを付着させないために空間内にあるイオンを中性化させるエリア除電システムが有効になるのではないかということでエリア除電システムをクリーンブース内に導入した。イオンカウンタの測定では神岡坑内のイオンは主にラドン娘核から来ており、そのイオンを中性化できていることがわかったので、有望であり、今後エリア除電システムの試験、改良を行っていく。 ラドンは暗黒物質探索をする上でさまざまな場面でバックグラウンドになりうる。そのためそのラドンを測定するラドン計の高感度化は必要になるが、特に検出器部材の選定に有効である。ラドン計のバックグラウンド候補はPINフォトダイオード、検出器容器のステンレス、溶接部であるが、PINフォトダイオードは1個当たり0.0032mBq以下ということが測定からわかった。バックグラウンドは検出器容器そのものの溶接部を含むステンレス部分からくることがわかったので、今後はそのバックグラウンドを抑える方法を検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度末にエリア除電システムを導入した。予備試験で通常設定ではラドン娘核の付着が約半分に抑えられることが分かっているが、パラメータを変更して試験を行いたいため特別仕様のものを導入した。導入手続き、業者での製作に時間がかかり、納入が予定より遅れ昨年度末になった。
神岡坑内は夏ラドン濃度が高く、冬に低くなるが、イオンカウンタにより空気中のイオン濃度をモニタしたところ、とラドン濃度と同様の傾向を示した。坑内では温度、湿度はほとんど一年を通してかわらないことからラドンが主なイオン源と思われる。ラドン濃度とイオン濃度に高い相関があることがわかった。エリア除電システムを稼働させるとイオン濃度が減ることから、エリア除電システムの適切なパラメータを設定させることによりラドン娘核の付着を抑えられる見通しがたった。
ラドン計の高感度化に関しては次年度から研究をする計画であったが、開始できる条件がそろい、エリア除電システムの納入が遅れテストができない状況であったことから今年度から始めた。ラドン計の高感度化には部材からのラドン放出を抑える必要があるが、ラドン放出をしうる候補の1つ、PINフォトダイオードからの放出を測定したところ1個当たり0.0032mBq以下というこがわかり主要因ではないことがわかった。このことから主なラドン放出は検出器自体つまり、ステンレス表面からの放出と思われる。このため、ステンレス製検出器の表面に銅電鋳を施してラドン放出を抑えられないかを検討、試験した。約200μmの銅電鋳を施し、表面積を減らすため約100μm分電解研磨を行いテストしたが、0.16±0.03mBqのラドン放出が観測され銅電鋳無しと比べ変わらなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度末にエリア除電システムが導入されたのでエリア除電機によるラドン娘核の付着を抑える試験を行っていく。通常設定では除電のためのイオン放出がプラスイオン6秒、切り替えのため放出無し2秒、マイナスイオン6秒切り替えしのため放出無し2秒が繰り返される。クリーンブース内の天井から床まで空気が移動する時間は短いので、イオン放出の切り替え頻度を落としほぼ常時放出されるようにすることにより崩壊してできたラドン娘核も中性化の効率をあげる。またイオン放出されるワイヤーの間隔を極力狭め、場所に依存することなく中性化させたい。
ラドン検出器の高感度化に関しては昨年度の測定からすでにステンレス表面からの放出を抑えることをすればよいということは分かった。そのためラドン放出を抑える方法を確立したいのだが、昨年度は銅電鋳がうまくいかなかった。しかし、きれいとわかっている銅電鋳の厚みを再見積もりし、ラドン放出を伴わない検出器の開発を進めていきたい。
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