2020 Fiscal Year Research-status Report
次世代型ミュー粒子・電子転換過程探索実験に向けたファイバー飛跡検出器の開発
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17K05470
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
清矢 良浩 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (80251031)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | プラスチックシンチレーションファイバー / MPPC / 応答時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
・大量の荷電粒子(バースト)照射によるプラスチックシンチレーションファイバー + MPPC 読み出し系の飽和現象の理解を進め,飽和から数 100 ns で素早く動作復帰し,単一荷電粒子検出が可能なファイバー飛跡検出器開発のための要素技術研究を継続した. ・直径 0.1 mm のプラスチックシンチレーションファイバー 10 本をバンドルとしてまとめたものにバーストを照射し MPPC で読み出した際に,時間的に復帰が遅い飽和現象が存在することが確認されている.昨年度は,バンドルにバーストを照射し,バンドル中の 1 本だけを読み出した場合と 0.1 mm ファイバー 1 本のみにバーストを照射し,それを読み出した場合を比較し,応答に大きな違いが無いことを明らかにした.これにより,バンドル化に原因があるのではなく,MPPC 固有の性質によるものである可能性が高いことが示された. ・今年度は,MPPC 固有の性質であるか否かをさらに確かめるために,MPPC への印加電圧を OFF の状態から ON の状態に素早くスイッチする回路を作成し,バースト照射のタイミングにおいては MPPC を OFF にしておき,バースト照射直後に ON にすることを試みることにした.さらに,異なる光センサーとの比較として光電子増倍管を用いてデータ取得することも計画した.実験は 11 月に,京都大学複合原子力科学研究所ライナックを用いて行い,約 1e7 個のバーストを照射してデータを取得した.その結果,まず PMT の応答には復帰が遅い成分は見られず,やはり MPPC が原因であると示唆されることが確認された.そして,MPPC への印加電圧をスイッチしたデータからは,興味深いことに,バースト後に ON にしたにも拘わらず,時定数の大きい遅い復帰成分が,ほぼ変化無しに残っていることが判明し,新たな知見が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・バーストによる飽和からの復帰が遅い原因が MPPC の性質にある可能性が高いことが明らかになった. ・印加電圧スイッチングによる興味深い新たな知見が得られた.単純な印加電圧 ON/OFF では解決できなかったことから,電圧 OFF 時にも存在する空乏層でのバーストによる電子・ホールペア生成等が関係している可能性がある.MPPC の半導体物性により踏み込んだ理解の重要性が示唆され,問題の核心により近付いたと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
・MPPC に原因がある可能性が高いことから,ビームを用いずにベンチテスト等で大強度の光を照射し,MPPC の性質を理解していくことが可能であると思われる. ・R 3 年度も京都大学複合原子炉研究所でのテスト実験が採択されたので,ビーム照射による実験も行う. ・この研究は,ミューオン・電子転換探索実験 DeeMe の高度化も意識したものなので,DeeMe プロジェクトの推進にも貢献できるように配慮しながら進める.
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Causes of Carryover |
・コロナ禍の影響により,京都大学複合原子力科学研究所において予定されていた 2 回の実験うち 1 回がキャンセルになり,実験機器輸送等の支出が無かった. ・R 3 年度も,京都大学複合原子力科学研究所における実験のため,実験機器輸送費用に支出する予定.
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Research Products
(2 results)