2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K05473
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
加藤 幸弘 近畿大学, 理工学部, 教授 (60278744)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | セラミックGEM / ガス検出器 / 増幅率 / エネルギー分解能 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機化合物を絶縁体に用いている従来のGEMと異なり、絶縁体にセラミックスを用いたGEM(LTCC-GEM)は高い耐放電特性、高い増幅特性と簡略な製造工程による安価で製作できるという利点を有する。LTCC-GEMの実機への採用を目指して基本特性の評価を行い、従来型GEMとの比較からLTCC-GEMの利点をはっきりさせることが研究の主な目的である。 平成29年度は10㎝角の大きさで有感領域(孔が開けられた領域)が6㎝角のLTCC-GEMを用いて増幅率、エネルギー分解能、増幅率の一様性を測定した。これらの測定では、2種類の絶縁体の厚さ(100μmと200μm)のLTCC-GEMを使用した。得られた増幅率は最大で1800(100μm)と3000(200μm)であり、GEM両端に印加 した電圧と増幅率の関係は検出器内ガスの種類によらずほぼ一定であった。得られたエネルギー分解能は、放電の影響が少なく増幅率が100を超える範囲においてGEMの厚さによらず約20%(FWHM)であった。また、1cm角の領域毎の増幅率の変動は10%未満(FWHM)であるが、系統的な非一様性が生じているかは不明であった。 平成30年度は厚さ200μmで10cm角の有感領域を有する一般的な大きさのLTCC-GEMを製作し、平成29年度と同様の測定を行うことで、6cm角のLTCC-GEMとの比較をした。得られた増幅率とエネルギー分解能は6cm角の結果と同じであり、有感領域の大きさに依存しないことが確認できた。1cm角の領域毎の増幅率の変動は約20%(FWHM)と2倍程度大きくなり、変動の原因と解決が重要である。また、放電頻度は3X10^-3 Hz程度と6cm角よりも3倍程度大きくなったので、さらなる放電抑制策の検討をしなければならない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年、30年度で標準サイズ(大きさが10cm角)のLTCC-GEMの基本特性の測定を行った。 平成29年度に行った放電抑制の方策であるGEM両面に金メッキを追加する方法を平成30年度に製作した10cm角の有感領域をもつLTCC-GEMにも施して、基本特性の測定を行った。増幅率とエネルギー分解能は、予想通りに有感領域の依存しないことが確認でき、1枚で1000倍を超える増幅率が得られたのは大きな成果である。放電頻度や増幅率の位置依存性は有感領域に依存することを確認できたが、得られた結果は従来のGEMよりも良くないことがわかった。 LTCC-GEMに金メッキを追加で施すことで放電は大きく抑制することができたが、得られた放電頻度は従来のGEMよりもかなり高いためさらなる放電対策の検討が必要であることがわかった。 平成30年度のもうひとつの目的であった大型GEMモジュールの製作であるが、25cm角の有感領域を有するLTCC-GEMの製作は完了できた。ただし、穴径と穴ピッチは製造過程の問題から穴径200μmΦでピッチ300μmに変更した。アノード用電極基板は、1.25cm角ピクセルからなる25cm角基板と25cm角の銅箔基板の2種類を製作した。2種類の基板を用いることで、大型モジュール独自の条件と10cm角GEMと同じ条件での測定が可能になる。また、大型モジュールに適合したカソード電極用導電性透明フィルムも入手できたので、平成31年度には大型モジュールでの特性測定を開始することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
大型LTCC-GEMでの基本的特性の測定と新たな放電抑制対策の検討を中心に進めていく。 平成30年度に大型LTCC-GEMに必要な機材が全て準備出来たので、今年度は大型GEMの基本特性の測定を開始する。但し、現在までの進捗状況で述べたように、大型GEMの穴径と穴ピッチがこれまでのGEMと異なっているため、大型GEMと同じジオメトリを持つ10cm角GEMでの測定を事前に行い、ジオメトリの違いによる特性の変化が生じるかどうかを確認を行う。特に増幅率や放電頻度は穴径に依存することが予想されるために、性能が向上するのかどうかをきちんと見極める必要がある。もし、性能が低下することが明らかになるのであれば、これまでのLTCC-GEMと同じジオメトリで大型GEMを製作する方法を平井精密工業と協議する必要がある。但し、平成31年度は現有の大型GEMで基本特性を測定し、大型GEMがこれまでのGEMと同様の性能を有するのか、大型化による影響がどの程度あるのかを評価する計画である。 新たな放電抑制対策であるが、これまでの経験から材料や製作過程の見直しが必要であるように感じられる。セラミック両面に塗布した金粒子のサイズが小さくないために、焼成後に金粒子が孤立して周囲の金粒子と電位差が発生するために放電が起こる可能性がある。金メッキによってこの状況が改善されるために放電が抑制されたと予想できるが、本当か不明である。そのために、平井精密工業と詳細に検討を行い、放電を抑制できる新たな方法を探索する。放電抑制対策については、研究期間を超えても検討する計画である。
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Causes of Carryover |
今年度は物品費が当初計画よりも超過したが、旅費は当初計画よりも非常に少なかったので、全体として18万円程度の残額が生じた。計画では海外の国際会議に出席することを計画していたが、都合により会議に出席出来なかったために旅費の使用額が少なかったことが原因である。しかし、物品費の超過分の補填が出来たことで研究が進められた。 平成31年度使用計画として、大型GEMの性能測定を中心に行うことから、新たな信号読み出し機器の購入を計画している。計画している機器は多チャンネル信号読み出し機器であり、ピクセル電極基板での信号読み出しに使用する予定である。また、GEM検出器の運転に必要なガスやセンサーモジュール等も適宜購入する計画である。平成31年度予算と次年度使用額を用いることで、平成31年度も予定通り研究を進められると考える。
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