2017 Fiscal Year Research-status Report
高真空で用いる荷電粒子検出器開発によるK中間子稀崩壊探索感度の向上
Project/Area Number |
17K05480
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
林 ケヨブ 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (90332113)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 荷電粒子検出器 / 真空薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は検出器の最適化を行った。最適化のために開発したシミュレーションコードが、既存検出器環境でのバックグラウンドイベントの特徴及びバックグラウンドレベルを定量的に再現する事を確認した。大量のK中間子の崩壊を効率よく発生させ、KOTO実験の標準解析コードを用いて行う作業であり、データ解析メンバーとの緊密な研究打合せを行った。確立されたシミュレーション計算で、厚さ5mmのプラスチックシンチレータで170mmX170mm の断面を持つ四角パイプ型検出器を2個製作し、ビームラインを囲む案を第1案と決めた。これは、現検出器システムと比較すると30倍 以上のバックグラウンド除去能力を持つ案であり、現在は製作する検出器の技術的な部分で問題が生じないかを確認している。 幅170mm、長さ1.8mmのシンチレータの信号を、シンチレータに埋め込んだ波長変換ファイバーを通して、シンチレータの両端で読み出す。両端で読み出すのは、荷電粒子の入射位置を特定し、効率よくバックグラウンドを除去するためである。新検出器が設置される場所が極めて狭いため、PMTを用いる従来の読み出し方法は適用できない。そのため、シンチレータの表面にMPPCをつけて読み出す方法を確かめている。特に、獲得できる光量を測定する信頼できる方法の開発、光量増強のためのR&Dを行っている。ビームラインから近距離にある検出器であるため、中性子による劣化の効果についても注意深く調べている。MPPCの使用ができない場合のために、検出器の両端から中心に向かって波長変換ファイバーを接着し、PMTを用いて読み出すバックアップ案も準備した。 高真空域と低真空域を分離する真空薄膜の修正方法を開発するため、薄膜の製作会社を訪問し、打合せを行った。四角パイプ状の薄膜を製作し、融接とテープ止め方法でリーク量を測定することにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に目標としていた検出器の案ができたことから、おおむね順調に進展していると言える。研究開始時には不明であった、狭い空間での読み出しについ ての案がまとめられ、テストする段階に移行できたことは重要な進展である。真空テストシステムの整備はできたが、アウトガス測定は30年度に先送りになった。 それは検出器を低真空域に設置することにしたため、測定の重要性が低下したからである。(30年5月中には測定を開始する。)
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Strategy for Future Research Activity |
実機同様の検出器(長さ1.8mの波長変換ファイバーを埋め込んだプラスチックシンチレータ)を製作し、検出器としての性能評価を行う。真空中での検出器の動作確認、信号の大きさと雑音の有無などを検証する。必要に応じて、検出器の改善を行う。主な性能評価は宇宙線を用いて行う予定だが、必要に応じて、電子 ビームを用いたテスト実験も検討する。 検出器の設置時に、真空薄膜の修正も行う。薄膜の修正は設置された状態で行う必要があるので、複数の薄膜の製作・作業手順の確認を繰り返して行う。本研究で開発された検出器を既存のKOTO検出器に設置するためには 、一体になっている真空チャンバーを分解する必要がある。真空チャンバーの内部(開発された検出器の設置場所)にアクセスが可能になった時点では、真空薄膜設置のために製作した治具を精密に確認、必要な修正を行う 。H30年度中に検出器の製作、設置を完了し、H31年度のビームタイムで収集するデータの解析を通じてバックグラウンド除去能力向上を確認する。
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Causes of Carryover |
本年度ではシミュレーション計算を中心とした、検出器の最適化を行った。読み出しテストに必要なシンチレータ、波長変換ファイバー、MPPCはKOTO実験グルー プが所有しているものを使用することで、費用を抑えることができた。次年度使用額はH30年度に行う実機製作に必要な費用として使用する。
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