2019 Fiscal Year Research-status Report
Electronic states of bismuth layered materials with black-phosphorus-like structure
Project/Area Number |
17K05493
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中辻 寛 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (80311629)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平山 博之 東京工業大学, 理学院, 教授 (60271582)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 表面電子状態 / ビスマス超薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、いくつかの半導体基板を用いて黒リン(BP-like)構造をもつBi(110)超薄膜を作製し、角度分解光電子分光(ARPES)と、スピン分解ARPESを用いて、電子状態を明らかにする。試料としては、(a) フラットなSi(111)√3×√3-B基板、(b) Si(111)微傾斜面に作製したSi(111)√3×√3-B基板、(c) 同微傾斜面に作製したSi(111)7×7基板、(d) 同微傾斜面に作製したSi(111)1×1-H基板、のそれぞれに、Bi(110)超薄膜を成長させて用いる。微傾斜基板としては、<-1-12>方向に1.5°オフのSi(111)を用いる。 令和元年度は、(a)については液体窒素温度程度に保った基板にBi(110)超薄膜を成長させた場合の走査トンネル顕微鏡観察と表面X線回折実験を行い、4原子層厚さのBP-like構造を広範囲に形成できることを明らかにした。また(b)についてはメタほう酸(HBO2)の蒸着により微傾斜基板に√3-B構造を作ることに成功した。Si(111)4×1-In表面にBiを蒸着すると、蒸着量、蒸着時の基板温度、蒸着後のアニール温度等の条件を変化させることで様々な表面超構造が形成されることを前年度に見出していたが、これをさらに進めて、同じ√3×√3構造であってもBi:In比の異なる構造が得られることを明らかにした。さらにSi(110)基板に形成される3×2-Biおよび3×4-Bi構造についてはこれまで電子状態が明らかになっていなかったが、ARPESとXPSを用いて詳細に明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は、低温蒸着により作製した試料(a)についての実験結果を解析し、報文にまとめている段階である。試料(b)については基板となる√3-B構造の作製条件を明らかにした段階であり、Bi(110)超薄膜形成については年度内に行うことができなかった。一方、基板にSi(111)4×1-In表面を用いて作製したBi-In表面合金については作製条件を変えた実験を行い、昨年度に引き続き新たな表面超構造を見出している。また新たにSi(110)基板を用いた実験を行った。これは、(110)面の2回対称性を利用して、単一ドメインあるいはドメイン数の抑制されたBi(110)超薄膜が形成されることを期待したものであったが、実験の範囲内では得られなかった。しかしながらこれまでに良く調べられていない3×2-Biおよび3×4-Bi構造についてはその電子状態を詳細に明らかにすることができた。以上総合すると、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
試料(b)については微傾斜基板に√3-B構造を作ることに成功したので、今後Bi(110)薄膜を作製し、回転ドメイン数抑制の可否を調べるとともに、電子状態をARPES測定により明らかにする。Si(111)4×1-In表面を用いて作製できたBi-In表面合金については、今後さらに詳細な電子状態測定を行う。Si(110)3×2-Bi表面については、電子回折とSTM観察実験により、表面原子構造を調べる予定である。
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Causes of Carryover |
実験に必要な超高真空物品を設計・製作する予定であったが、年度内に間に合わなかったため、次年度に製作する計画である。
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