2018 Fiscal Year Research-status Report
エキシトニック系におけるワニエ・モット描像とフレンケル描像間のクロスオーバー
Project/Area Number |
17K05497
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
浅野 建一 大阪大学, 全学教育推進機構, 教授 (10379274)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀田 知佐 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50372909)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 励起子相 / 量子Hall効果 / サイクロトロン共鳴 / 揺動散逸定理 / Fano効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)揺動散逸定理は線形応答関数と平衡状態での物理量の時間揺らぎの逆温度倍に等しいという関係式である。古典系では線形応答関数の散逸に直接関係する成分のみならず、関係しない成分にも関係式が成立する。量子系では測定による反作用があるため、ゆらぎの測定可能性を検討しなければならない。散逸に直接関係する成分については、量子系でもある種の理想的な測定を行えば静的極限で関係式が成立するが、関係しない成分については関係式が破れることが知られていた。そこで、磁場下の二次元電子系の Hall 伝導度を例にとり、その破れの大きさを具体的に調べ、低温強磁場で揺動散逸定理の破れの大きさが Hall 伝導度よりも1桁以上大きくなることを示した。光吸収スペクトル(サイクロトロン共鳴)から、実測可能なゆらぎのスペクトルを再現する方法を明らかにした。2)二重量子ドット系の離散準位と空間的に広がった連続的な準位が結合して生じるFano効果について調べ、トンネルスペクトルの実験データを、単純なモデルで定性的に説明することに成功した。3)励起子絶縁体の多軌道モデルと同等のダイマーダンベルモデルにおける量子効果を調べ、二軌道の混成状態に相当するBEC相(励起子相)でスピンネマティック相が現れることを示した。4)量子多体系の有限温度の物理量を求める際に有限サイズ効果を抑える数値計算手法を開発した。5)二次元反強磁性体のマグノンを用いた新しい純スピン流生成機構を提案した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年生じた遅延をまだ取り戻せていない。ただし当初副次的なものとして考えていた研究課題はかなり進展し、論文としてまとめることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
主軸として目指す課題について研究の遅れがまだ取り戻せていないため、ナローギャップ半導体/低密度キャリアセミメタルの研究に本腰を入れていきたい。特にエキシトニックな効果とプラズモニックな効果を同等に扱える理論の構築が急務である。また、フレンケル励起子を考える舞台として、多軌道ハバード模型の研究を進める。その際に今年度開発した新しい計算手法を適用することを予定している。励起子凝縮相と他の秩序の共存の問題についても考えたい。 今年度の研究で励起子系と対応する量子スピン系を考えると、励起子絶縁体がネマティック相にマップされることが分かった。このネマティック相の近傍にはBECネマティック相とよばれる二つの秩序パラメタの共存した相が得られている。これを励起子系の話に焼き直すことにより、新たな量子相が生じる可能性に関して吟味したい。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:年度末に予定していた出張の旅程が変更となり、本科研費から支出することをとりやめたため。 次年度使用額の使用計画:次年度、計算機購入を計画しており、計算機のメモリを増設する費用として使用する予定である。
|
Research Products
(22 results)