2017 Fiscal Year Research-status Report
Innovative research on electronic properties in alloy semiconductors
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17K05498
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
篠塚 雄三 和歌山大学, システム工学部, 教授 (30144918)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋元 郁子 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (00314055)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 化合物半導体 / 混晶 / バンド構造制御 / キャリア / 有効質量 / サイクロトロン共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
理論面では、本研究の基礎となっているIQB理論を拡張させ、II-VI族とIII-V族を混ぜた新規混晶系(II-VI)1-x(III-V)xの電子状態を計算することに成功した(課題2)。その際、電荷がユニットセル内で統計的には中性となるように仮定し、計算上で必要となるtransfer energyのirregularなボンド(II-VやIII-VIなど)での値を補完式を仮定して見積もった。具体的な混晶半導体として(ZnO)1-x(InN)xを対象に電子状態を計算し、電子状態の擬バンド構造の組成比依存性を求めた。その結果は九大の板垣らによって得られている実験結果をある程度うまく説明することができた。 実験面では、混晶結晶系での測定に先立ち、市販の高純度GaAs結晶およびGaP結晶でのマイクロ波共鳴測定と光学測定を実施した。GaAs結晶で、X-band(9.6 GHz)とQ-band(34 GHz)のマイクロ波を用いて、励起光波長およびマイクロ波強度の工夫により、光注入したキャリアについてキャリア密度が高い状態に表れるマグネトプラズマ共鳴-マグネトレジスタンスの観測ができた。しかし、励起光強度の最適化が十分でなく、サイクロトロン共鳴の測定には至っていない(課題4)。GaP結晶で、定常法および時間分解法で光キャリアをマイクロ波で観測する実験を行ったが光キャリア由来の信号を確認できず、キャリアをトラップする準位の混入が疑われた。そのため、発光測定を行ったところ、窒素等の不純物混入を確認した(課題3、4)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理論面では、IQB理論を拡張させII-VI族とIII-V族を混ぜた新規混晶系(II-VI)1-x(III-V)xの電子状態を計算することに成功した。しかし、IQB理論の欠点である不可避的に出現するバンドギャップについて、その適否や局在状態の真偽を判定する条件(課題1)を求めることにはまだ成功していない。 実験面では、混晶結晶系を調べる上で出発点となる、最も簡単なケースであるGaAs結晶およびGaP結晶において、未だCRスペクトルを得られておらず実験手法が確立できていないため、実験部分は遅れている。GaAs結晶では励起光強度の最適化が十分でないこと、GaP結晶では十分良質な結晶試料を用いられなかったことが理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
理論面では、IQB理論において電子状態の基底関数の完全性や直交性を再検討し直すことで、不可避的に出現するバンドギャップの適否や局在状態の真偽の判定条件を求める。一方、(ZnO)1-x(InN)x以外の新規規混晶系の電子状態を計算し組成比依存性を明らかにする。 実験面では、キャリア散乱時間(τ)が短い直接キャップの半導体において、CR測定のための条件(2πfτ>>1)を満たすためには、X-bandよりも3.5倍高周波のQ-band(f=34 GHz)マイクロ波を用いる方が望ましい。Q-bandで、光キャリアを低密度に注入するための励起光強度の最適化を、光変調や適したフィルターを用いるなどの工夫をしてさらに行い、光キャリアのCR測定を目指し励起方法を確立させる。また、より純度が高く高品質な結晶を入手して、光学測定で結晶品質を調べることとX-bandでのCR測定実験を推進する。
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Causes of Carryover |
(理由)理論面では、IQB理論の欠点の解消ができなかったため、当初計画していたアイルランドのO'Reilly 教授の研究室訪問を次年度以降に延期したことによる。一方、実験面では、学内でのX-band装置では、GaAs結晶でのCR測定を行う上で測定条件を満たすことが厳しいことが分かったので、学外でのQ-band(34 GHz)測定にシフトさせたことにより、X-bandでの実験の回数が予定より少なくなった。その分、寒剤に当てる予算を消化しなかった。 (使用計画)理論面では、IQB理論の欠点解消の目処がつき次第、アイルランドのO'Reilly 教授の研究室訪問を計画する。H30年度においては、新規試料が得られる見込みであるので、X-bandでの実験頻度があがるため、寒剤代、光源代として消費する。
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