2017 Fiscal Year Research-status Report
強相関電子系物質ナノ結晶の金属絶縁体転移の基本特性の解明と応用可能性の探索
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17K05501
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
石渡 洋一 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00373267)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ナノ結晶 / 金属絶縁体転移 / 強相関電子系物質 / 溶液合成 / 光電子分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、強相関電子系物質ナノ結晶を化学的な手法で合成し、金属絶縁体転移(MIT)のナノサイズ効果の解明と、その応用可能性を探ることを目的としている。 平成29年度は、結晶サイズが20 nm程度のV2O3ナノ結晶についてTiドープ量を20%程度まで大きく変化させることを行った。結果はバルクの場合と異なり、MIT温度が100 K程度までにしか下がらないまま、変化があいまいになって行き、Tiを10%程度近くまでドープしたときにMITが消失することが示された。さらにTiをドープすると、バルクでは見られない常磁性絶縁体(PI)相が生じることを見出した。V2O3ナノ結晶の光電子分光から、バルクに比べて電子相関が大きくなっていることが分かったため、このことがTiドーピングした場合においても絶縁体相が安定化した理由であると考えられる。また、絶縁体相に有利になるような結晶構造の変化も観測された。 一方、結晶サイズが4, 15, 20 nm程度のNiSナノ結晶の合成にも成功した。現在のところサイズのばらつきが大きく、詳細なサイズ効果を調べることに向けて課題が残るが、何れのサンプルサイズにおいても不純物(Co)を僅かに加えたナノ結晶で相転移の発現が観測された。ただし、4 nmのサンプルでは反強磁性転移だけが観測され、MITが消失している様子が示された。このことは、2つの相転移に与えるサイズの影響に違いがあったことを示唆する結果であり、今後より詳細に検討を進める予定である。 これらの成果は、ナノ結晶ではバルクとは異なるMITが見られることを示している。今後、ナノ結晶のサイズ制御を高めて、さらに、新たな物質群に対象を広げて行けば、そこで見られる新現象の全貌を把握できるはずであると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画どおりにV2O3とNiSナノ結晶の再現性の高い合成方法を見出しており、光電子分光などを用いて、それぞれの金属絶縁体転移の観測を行っている。結晶サイズは特にNiSにおいてばらつきが大きいものの、結晶サイズを変化させることにも成功している。それによって、相転移のサイズ効果も観測した。今後詳細なサイズ依存性を調べるための準備は整ったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の基本方針としては、V2O3とNiSナノ結晶の結晶サイズを詳細に変化させ、それぞれの金属絶縁体転移がサイズでどのように変化するかを明らかにする。特に、金属絶縁体転移は磁気転移や構造転移と常に共存を続けるか?金属絶縁体転移が失われる臨界サイズはいくらか?といった問への回答を得ることを目標にする。また、より複雑な相転移を示すペロブスカイト型遷移金属酸化物のナノ結晶の合成を開始する。
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Research Products
(9 results)