2017 Fiscal Year Research-status Report
不連続な表面張力によりファセット化したマクロステップ形成とステップ・ダイナミクス
Project/Area Number |
17K05503
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Research Institution | Osaka Electro-Communication University |
Principal Investigator |
阿久津 典子 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (40167862)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マクロステップ形成 / ファセッティング / 非平衡定常状態 / 2次元古典核形成理論 / 2成分定比化合物 / 表面荒さ / 4H-SiC / 表面キンク密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
SiCは半導体であるがエネルギーギャップが大きいので大電流においても絶縁破壊されにくく、未来の大電流制御半導体として期待されている。しかし、ファセット化したマクロステップが形成されるため良質な結晶を得ることが難しい。 結晶微斜面を形成するステップは平衡状態で不安定であり、非平衡状態で時空パターン形成としてマクロステップが形成される、と考えられてきた。しかし、我々は<111>方向に(001)面から傾いた微斜面で(111)面が平衡状態でマクロステップを形成される模型、点型ステップ間引力がある制限solid-on-solid模型(p-RSOS模型)、を提唱し、ステップ間引力と温度をパラメタとする空間で表面張力の不連続性と微斜面のモルフォロジーとの関係を明らかにしてきた。 パラメタ空間の中でステップ・ファセティング・ゾーンと呼ばれる領域では、<111>方向に傾いた微斜面において(001)面と(111)面だけが安定であり、それ以外の傾いた面は熱力学的に不安定である。この現象は4H-SiCのSiからの溶液成長で観測された。そこで、この模型の非平衡定常状態における成長速度とマクロステップの平均高さをモンテカルロ法で調べ、成長駆動力依存性を明らかにした。結晶成長におけるモルフォロジー変化の理論研究はこれまで拡散律速の場合に行われ、そこでは見えなくなっていた現象を明らかにした(業績1)。 表面荒さの変化により、駆動力により多様な成長様式の変化を示すことを明らかにした。また、その多様性は2次元古典核形成理論で定性的なだけでなく定量的にも説明できることを示した。 さらに、大学院生の村田直也君と2成分定比化合物のマクロステップの平均高さをモンテカルロ法で調べ、平衡状態であっても環境相の成分比に偏りがあればマクロステップが形成される場合が有ることが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.p-RSOS模型のステップ・ファセティング・ゾーンにおけるファセット化したマクロステップについて、非平衡定常状態におけるステップダイナミクスを平均高さ、表面成長速度、テラス面傾き、ステップ成長速度をモンテカルロ法で詳細に調べた。この成果はPhysical Review Materialsで論文として出版された。 2.大学院生の村田直也君と、2成分定比化合物の微斜面に関して平衡状態におけるマクロステップの平均高さをモンテカルロ法で調べ、環境相に成分の偏りが有るとマクロステップが形成されることを示した。この成果を日本物理学会で発表した。 3. Maryland大学のT.L.Einstein教授を短期招聘し、"New developments in step dynamics on crystal surfaces: from nanoscale to mesoscale"というテーマで大阪電気通信大学主催の国際ワークショップを開催した(http://www.feri.osakac.ac.jp/workshop/ws20171027.html)。国内外からマクロステップに関わる実験・理論研究者の講演を聞きマクロステップ関する情報を収集した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.p-RSOS模型のステップ・ドロプレット・ゾーンについて、微斜面の傾きと温度の空間でファセティング・ダイヤグラム(相図)を作成する。Si(113)面の実験結果に適用し実験結果からわかる点型ステップ間引力(電子雲の重なりによる結合軌道形成を想定)の大きさを評価する。 2.これまでに得られた結果をSiの(7x7)-(1x1)相転移によって引き起こされるステップ・バンチング現象に適用し、ステップ間反発エネルギーなどについて定量的な結果を得る。 3.2成分定比化合物の模型に、これまで第1近接相互作用のみ考慮したが、第2近接相互作用も取り入れ、例えばSiCにおけるSi面とC面の違いを表せるようにしつつ、平衡状態のマクロステップ高さを調べる。
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Causes of Carryover |
1.会議費を支出しなかった理由:大阪電気通信大学国際ワークショップを大阪電気通信大学エレクトロニクス基礎研究所と共催した。その際、エレクトロニクス基礎研究所はすでに国からの補助を受けているので、阿久津の科研費から支出すると2重の支出になる。そこで、国際ワークショップで必要となった支出は大阪電気通信大学の国際交流事業とエレクトロニクス基礎研究所から支出し、阿久津の科研費からは支出しないことになった。 2.国際会議に成果発表のため旅費を中心とした支出になった。
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Research Products
(19 results)