2018 Fiscal Year Research-status Report
不連続な表面張力によりファセット化したマクロステップ形成とステップ・ダイナミクス
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17K05503
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Research Institution | Osaka Electro-Communication University |
Principal Investigator |
阿久津 典子 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (40167862)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ファセット化したマクロステップ / 不連続な表面張力 / 非平衡定常状態 / 反応(界面)律速結晶成長 / ディープラーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
SiCは半導体であるがエネルギーギャップが大きいので大電流においても絶縁破壊されにくく、未来の大電流制御半導体として期待されている。しかし、ファセット化したマクロステップが形成されるため良質な結晶を得ることが難しい。 ファセット化したマクロステップのダイナミクスを明らかにするため、点型ステップ間引力がある制限solid-on-solid模型(p-RSOS模型)、を提唱し理論的に研究している。この模型の微斜面では表面張力(単位面積当たり表面自由エネルギー)が低温で不連続となることを密度行列繰り込み群計算で明らかにした。特に、ステップファセティング・ゾーンにおいて<111>方向に傾いた微斜面では(001)面と(111)面だけが安定であり、それ以外の傾いた面は熱力学的に不安定である。この、完全にファセット化した微斜面について、反応律速(界面律速)における非平衡定常結晶成長をモンテカルロ法で調べた。結晶が成長する場合、マクロステップの端の凹部から2次元多数核形成し、エレメンタリ・ステップがマクロステップから離脱する部分が律速過程となることを示した。一方、結晶が蒸発・溶解する場合、マクロステップ端の凸部からへこみの2次元多数核形成によりエレメンタリ・ステップがマクロステップから離脱する部分が律速過程となることを示した。 データ科学を取り入れる可能性を探るため、大阪電気通信大学で機械学習のワークショップをエレクトロニクス基礎研究所主催、日本結晶成長学会、日本物理学会大阪支部、応用物理学会関西支部、日本表面真空学会関西支部の共催で行った。実施日は2018年7月1日、題目は「界面・ナノ構造・結晶成長への機械学習の応用と実践」であった。さらに、米国で開催された計算物理の国際会議に出席し、マクロステップの研究成果発表を行うとともに、機械学習の計算物理における最新成果を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.p-RSOS模型のステップ・ファセティング・ゾーンにおけるファセット化したマクロステップについて、非平衡定常状態におけるステップダイナミクスを平均高さ、表面成長速度、テラス面傾き、ステップ成長速度をモンテカルロ法で詳細に調べた。さらに内部変数である、ファセット化したマクロステップがある表面の成長速度とマクロステップ高さの関係を明らかにした。この成果はCrystal Growth & Designで論文として出版された。 2.大学院生の村田直也君と新たに大学院に進学した杉岡良樹君とともに、2成分定比化合物の微斜面に関して平衡状態におけるマクロステップの平均高さおよび表面荒さをモンテカルロ法で調べた。環境相に成分の偏りが有ると表面荒さが荒くなること、Ising模型で計算されたステップスティフネス(N. Akutsu, J. Phys. Soc. Jpn. 61 (1992) 477 )により、良く説明できることを示した。この成果を日本物理学会で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.p-RSOS模型のステップ・ドロプレット・ゾーンについて、微斜面の傾きと温度の空間でファセティング・ダイヤグラム(相図)を作成する。Si(113)面の実験結果に適用し実験結果からわかる点型ステップ間引力(電子雲の重なりによる結合軌道形成を想定)の大きさを評価する。 2.これまでに得られた結果をSiの(7x7)-(1x1)相転移によって引き起こされるステップ・バンチング現象に適用し、ステップ間反発エネルギーなどについて定量的な結果を得る。 3. p-RSOS模型の表面荒さの結晶成長駆動力依存性を調べる 3.2成分定比化合物の模型に、これまで第1近接相互作用のみ考慮したが、第2近接相互作用も取り入れ、例えばSiCにおけるSi面とC面の違いを表せるようにしつつ、平衡状態のマクロステップ高さを調べる。
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Causes of Carryover |
1.2017年度に会議費を支出しなかったため繰り越されている。理由:大阪電気通信大学国際ワークショップを大阪電気通信大学エレクトロニクス基礎研究所と共催した。その際、エレクトロニクス基礎研究所はすでに国からの補助を受けているので、阿久津の科研費から支出すると2重の支出になるため。 2019年度に使用する予定である。 2.国際会議に成果発表のため旅費を中心とした支出になった。
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Research Products
(12 results)