2017 Fiscal Year Research-status Report
Various ordering states in photo-induced phase transitions and the effect of the elastic interaction in the dynamics
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17K05508
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
西野 正理 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主幹研究員 (80391217)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮下 精二 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10143372)
末元 徹 公益財団法人豊田理化学研究所, フェロー事業部門, フェロー (50134052)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 光誘起相転移 / 弾性相互作用 / 長距離相互作用 / ユニバーサリティクラス / フラストレーション / 臨界現象 / 核生成 / スピンクロスオーバー |
Outline of Annual Research Achievements |
光などの外部刺激により相転移を示す物質系としてスピンクロスオーバー(SC)化合物などが知られている。スイッチングにおいては、電子状態と格子の結合のため、分子ユニットの状態変化に伴う体積変化による格子歪みが生じる。この格子歪みにより生じる弾性相互作用が、この系の協力現象に重要である。ある種のSC系においては、中間温度領域でlow spin (LS)分子とhigh spin (HS)分子が交互にならぶ交替相が実現する。この系は温度変化で2段階転移することが知られている。状態変化に伴う体積変化と協力的弾性相互作用の機構を取り入れたオリジナルモデルを解析し、この系の相図を理論的に詳細に調べた。弾性相互作用が比較的弱い場合、三重臨界点に特徴付けられる構造を有しているが、強くなると、三重臨界点が消失し、異常な角型構造が現われる事を見いだし、その機構を示した。また、それぞれの場合の温度変化による相転移のパターンの分類を理論的に行った。交替相とLS或いはHS相の間の2次転移は短距離的な相互作用が重要で有り、クラスタリングが起こるが、一次転移の場合、弾性相互作用由来の長距離相互作用が本質的であり、クラスター化が抑制され、相変化の機構が異なる事を見いだした。また、最近実験的に報告されているフェムト秒レーザーによる光励起によるスイッチング現象に関してもモデル計算を行った。局所的な緩和と弾性歪みが非局所的に伝搬する機構を調べ、実験に見られる光励起と相変化の閾値特性、非線形性の特徴を捉えた。さらに、弾性相互用の協力性により相変化が加速される弾性ステップを定性的に観察することに成功した。また様々な形状を持つ3次元モデルにおいて、HS相からLS相への熱緩和による核生成とドメイン成長のダイナミクスの相違を調べた。パウダーサンプルのX線回折実験に関連して、相転移の協力性を見積もるための方法論の提案も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回、我々は、温度変化で2段階転移することが知られている系の相図の詳細を理論的に明らかにした。これにより、温度変化による相転移のパターンを全て分類することが出来た。これまで、実験で2段階転移の各転移においては、一次転移あるいは連続転移、その組み合わせで起こる事が知られていたが、その現象を微視的モデルから理論的に説明することに成功した。これら現象に関わる相転移の普遍性の種類、相転移の種類によるクラスタリング機構の相違、その相違における短距離相互作用、弾性相互作用由来の長距離相互作用の役割の変化など、を理論的に明らかにした。弾性相互作用が比較的強い場合、相図の性質が変化し、異常な角型の構造が相図が現われることから、準安定の無秩序相が関与する、これまで考えられていなかった新たな2段階転移のパターンがあり得ることが新しく分った。これらの結果はこの系の複雑な協力現象の解明にとって有用な知見である。また、フェムト秒レーザーの光励起によるスイッチング現象の実験は興味を持たれており、さかんに行われているが、このスイッチングに関して、弾性相互作用のモデルに光励起効果を取り入れた研究を進めた。系の温度、光励起強度、光照射の仕方(照射位置)を変えて、局所的な緩和と弾性歪みが非局所的に伝搬する機構を調べた。そして、実験で見られる相変化における光励起閾値特性、非線形性の特徴、弾性ステップの様子を定性的に理論計算で捉えることが出来た。従って、これまで順調に研究が推移しており、今後更なる機構の解明を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2段階転移する系の相図、それに関わる相転移の普遍性の種類や可能な2段階転移の分類、クラスタリングの機構が理論的に示された。これにより、それぞれの準安定状態の性質や準安定状態のパラメーター領域を知ることができ、現実の物質系とパラメーター領域の対応が可能となってきた。このような解析は、光誘起準安定秩序相の可能性に関する有用な知見である。今後は、さらに複雑な秩序化を示す系や、異なる構造(対称性)を持つ系の相転移と核生成および成長の機構を調べていく。新たな系の相図を、準安定状態を含めて詳しく調べることにより、光誘起準安定秩序相の条件や可能性について考察を深める。また、フェムト秒レーザーの光励起によるスイッチング現象のモデルによる理論、計算に関して、方法論の改良を行っていく。光励起と緩和の機構をモデルに取り込んではいるが、現状のモデルは光励起直後の短いタイムスケールにおいて有効である。しかし、長いタイムスケールでは光励起後にオーダーが成長してやがて緩和して消失する。その緩和現象全体を扱うには、緩和の微視的機構の改良が必要であり、その機構を取り入れるための方法論の開発を行っていく。それにより光照射による核生成やドメイン形成のダイナミクスの長短の時間スケールでの特徴を明らかにして、協力現状の機構解明に繋げたい。また光学応答など、実験的に検証する方法の考案に繋げたい。上記の改善に加えて、より大きな系を取り扱えるようにシミュレーション手法やプログラムの大規模化へ向けた改良、拡張を行っていく。
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Causes of Carryover |
今年度は計算機の増設を予定していたが、手持ちの計算機で計画が進んだこと、また、次年度以降、当初予定より人件費が必要になる見込みのため、次年度に使用することにした。使用計画は、次年度分と合わせて、主として計算機部品及び人件費に使用する予定である。
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Research Products
(22 results)