2018 Fiscal Year Research-status Report
Search of new strongly correlated quasicrystals
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17K05524
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Research Institution | Toyota Physical and Chemical Research Institute |
Principal Investigator |
石政 勉 公益財団法人豊田理化学研究所, フェロー事業部門, フェロー (10135270)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 準結晶 / 近似結晶 / 価数揺動 / 正12角形準結晶 / 正20面体準結晶 / Yb合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
筆者らの見いだした価数揺動準結晶Au-Al-Ybは、圧力に依存しない量子臨界性を示した。これは準結晶と重い電子系をつなぐものとして注目されている。この現象をより深く理解するため、新物質探索を通して、準結晶および近似結晶の研究を進めてきた。 (1) 新規Yb系準結晶の構造モデル構築 六方晶ZrNiAl型と正方晶Mo2FeB2型構造が仮想的な正12角形準結晶の近似結晶とみなせる事を示した。両構造は、Ybなどの希土類元素を含む合金でしばしば形成し、価数揺動に関連した物性を示すものもある。ここでは、Pd-Sn-Yb系を例にとり、高次元解析法を用いて正12角形準結晶の構造モデル(5次元空間群P12/mmm)を構築した。この高次元モデルは、単位胞に4つのacceptance regionを含み、3次元構造は六方晶α-YbPdSnと正方晶Yb2Pd2Snの断片から構成されている。ここで提案した準結晶の構造モデルは、今まで個別に議論されて来た両近似結晶の物性を統一的に議論できる一つの可能性を示している。 (2) Cu-Ga-Sc1/1近似結晶の相分離の発見 (1)で述べたように、一般に周期性を持つ近似結晶は、準結晶の局所構造を理解するための重要なヒントとなる。ここでは、Tsai型正20面体準結晶と同じような局所構造(クラスター)を構造要素として含むCu-Ga-Sc1/1近似結晶の熱的安定性について実験した。その結果、Cu49Ga36Sc15では、500℃付近で格子定数がわずかに異なる2相に分離することが判明した。この相分離は可逆的であり、両相ともにTsai型の1/1近似結晶(体心立方)であり、組成がわずかに異なる(一つは、Cu48Ga37Sc15、他はCu52Ga33Sc15)。粉末X線回折のRietveld解析では、クラスター中心部に違いがあることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述したように新規の正12角形準結晶の構造モデルを提案した。さらに、この考察に基づいて探索実験を行ってみたが、うまくいかなかった。そこで、探索対象を正20面体準結晶に変更し、予備実験を行ったところ、Zn基合金で新規準結晶を得た。これをさらにすすめれば、研究目標に到達できると思っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、実験を中心に研究を推進する。特に予備実験で見いだした新物質、Zn-Au-Yb合金の正20面体準結晶と2/1近似結晶について研究を進めたい。構成元素であるZnは低融点・低沸点であり溶融時の蒸気圧も高いので、試料作製法および条件の検討を行ないながら、相安定性、単相組成領域を調べたい。また、物性評価に影響を与えるYb酸化物を減らす工夫も必要である。さらに、EDX付き走査電子顕微鏡、透過電子顕微鏡、X線回折などを用いた試料・構造評価、構造解析を進める予定である。また、名大理学部の物性グループとの共同研究により、準結晶と近似結晶の低温物性(磁性、比熱、電気抵抗)の測定も進める。特に、Ybの価数揺動が低温物性にどのように現れるか、準結晶と近似結晶がどう異なるのかに注目して研究を進めたい。
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