2018 Fiscal Year Research-status Report
Designing emergent phases based on dimer structure in solids
Project/Area Number |
17K05533
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀田 知佐 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50372909)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | ダイマー / ネマティック / BEC / ジャロシンスキー守谷相互作用 / マグノン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ダイマー構造をもつ系における新奇量子相の開拓が目的である。そこで、ダイマーダンベルモデル(二層格子で層間にダイマー構造を有する量子スピン系)における量子効果を、厳密対角化や解析手法を駆使して調べた。ダイマー内のS=1/2のスピン間に反強磁性相互作用がある場合、スピンは単純なシングレット状態を形成する。この状態はスピンギャップをもち、励起状態にはトリプレットがある。ダイマー間相互作用を入れると、これらがトリプレットの化学ポテンシャルやホッピング効果、トリップレット間相互作用として働き、比較的弱いダイマー間相互作用の範囲でBEC相や固体相(すべてのダイマーにトリプレットが局在して動けなくなった状態)などを形成する。その際、トリプレットにはS=1のスピン自由度が付与されており、これらがbilinear-biquadratic相互作用をすることによってスピンネマティックBEC相が実現することを明らかにした。 またこれら低次元量子スピン系のエキゾチックな基底状態の低エネルギー励起は、通常と異なった性質を持ち、それらが熱力学量や応答関数に反映されること期待されるが、実際にこれらの物理量を精密に信頼できる精度で計算できる方法論は殆どない。この点に関して、有限サイズ格子系の計算を用いて、磁化率を熱力学極限の値と遜色ない精度で求める方法論や、弱い磁場から強い磁場までバイアスのない線形・非線形応答を求める数値手法などを開発した。 そのほか、ジャロシンスキー守谷相互作用を有する2次元反強磁性体におけるスピン運動量ロッキングや熱ホール効果など、トポロジカルな量子状態の起源となる相互作用が比較的ありふれた磁性体においてどのように物性に顕れるかを調べ、多くの成果を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2年間で、当初設定した目標に合致した成果を達成することができた。実際、これまでの考え方では予想が困難であった新規量子相や、量子物性が実現すること、その起源をモデル計算によって明らかにすることができた。 また、それと並行して2つの数値方法論の開発という、高いレベルの目標を達成できたことは今後の研究の発展に役に立つと考えている。これらの研究は、それぞれ独立したテーマとなっており、類似した研究を複数行ったものとは質的に異なっており、その進捗には満足している。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでS=1/2のモデルにおけるスピンネマティック相に着目していたが、これをより大きなスピンの系(S=1,3/2)で実現すること、また熱力学量を用いてこの特異な状態を同定する方法を構築することを今後の課題と考えている。 またネマティック相を熱力学量を用いて具体的に同定し実験と比較する計画を実験グループとともに進めている。
|
Causes of Carryover |
本来使用しようと考えていた海外出張経費がすべて先方からの招待で賄われてしまったため、これらを来年度からの海外出張などにあてて研究成果の発信に務める予定である。 更に来年度以降の研究の推進のためにスペックが古くなった計算機の設備の刷新を行いたい。
|
Research Products
(19 results)