2019 Fiscal Year Research-status Report
Designing emergent phases based on dimer structure in solids
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17K05533
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀田 知佐 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50372909)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ダイマー / ネマティック / BEC / 四極子 / マグノン / 反強磁性体 |
Outline of Annual Research Achievements |
S=1のダイマーが2次元の三角格子状に並んだ量子スピンモデルの基底状態の相図を明らかにした。この模型は本来1ダイマーあたり9種類の基底を保持するため、量子多体計算が困難だが、本研究では、ダイマーのシングレット状態を真空,トリプレット状態をスピン-1ボソンとしたハードコアボソンモデルがこの系の低エネルギー状態を記述することを見出し、摂動論を用いて、まず具体的に両者の間の対応関係を求めた。さらにハードコアボソンモデルをアンダーソンタワー解析などの方法を用いて詳細に検討した結果、基底状態に3種類の四極子相が現れることを明らかにした。 これら四極子相は、ダイマーをユニットにした場合にスピン-1ボソンが存在しながらも、その磁気秩序が消失している状態である。とくにスピン-1のボソン数が少ないボーズアインシュタイン凝縮と四極子相関が共存した相が広い範囲で見いだされた。そのうちの一つの相は、四極子が長距離秩序を作りかけながらも完全には長距離秩序にならず 複数の相関が共存した新しい種類の液体相である可能性がある。
またそれ以外にも、反強磁性体のマグノン励起におけるスピンテクスチャや量子現象を設計するための一般論を構築した。反強磁性体は、2副格子が上下のスピン磁化をもちそれらが伸び縮みしてできるマグノン励起が存在する。系に反転対称性が破れたり、空間的に異方性のある相互作用が加わると、この二種類の励起の間に混成が生じ、スピンテクスチャやトポロジカルな性質が現れる。今回造った一般論により、例えばキタエフハイゼンベルグモデルなど、スピン軌道相互作用がない系においてもこれらの性質が現れることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題であるダイマー構造のある量子系の量子相であるネマティック相や四極子相を、本研究が始まって以来、二つのダイマー系の基底状態で見出している。 またその起源にダイマー構造が重要な役割を果たすこともわかってきた。 最近、有限温度でこれらの相がどのような振る舞いをするかを理解するために、数値計算による比熱や磁化率、相関関数などを求めたところ、特異な転移温度の磁場依存性などが見いだされており(現在投稿中)、今後の進展も十分見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、有限温度におけるネマティック相の性質に加え、四極子相の性質も明らかにするとともに、既に知られている磁場中でのネマティック相と、我々のダイマー系におけるネマティック相や四極子相との関係も明らかにできるような統一的な理論を構築する準備を進めている。
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Causes of Carryover |
一時的に雇用の謝金として計画していた予算が、雇用予定者の転出で繰り越す必要が出てきた。その雇用で行うはずだった研究の一部に関して、今回あらたに研究補助者として今年度の研究に参画する大学院生などに必要な予算として次年度使用する予定である。
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Research Products
(9 results)