2020 Fiscal Year Research-status Report
Designing emergent phases based on dimer structure in solids
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17K05533
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀田 知佐 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50372909)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ダイマー / 数値計算手法 / 四極子 / エントロピー |
Outline of Annual Research Achievements |
S=1のスピン2つからなるダイマーユニットにおいて、ダイマー内自由度の揺らぎとダイマー間相関によってダイマーごとにS=1の自由度が最も安定化し、これらがネマティック相を安定化させる系を念頭に置いて研究を行ってきた。今年度は、とくにモデルを簡単化させたS=1のbilinear biquadratic模型について、2次元三角格子および正方格子上の熱力学的な性質を調べた。特に基底状態が強的ネマティック相にある場合について低温、低磁場相を、変分型のモンテカルロ法を用いて調べたところ、強的ネマティック相に磁場をかけた際に転移温度がいったん上昇した後で下降するリエントラント現象が起こることを見出した。 この現象は, ネマティック相のエントロピーが磁場に対してほぼ変わらないのに対して競合する高温の常磁性相が磁場によって急速に エントロピーを失うことの差によって生じるものであり, ヘリウム系において有名なポムランチェック効果と類似した理解をすることができる。
また、ダイマー系をはじめとする強相関系の量子多体効果を調べるために、比較的最近提案された密度行列埋め込み群(DMET)とよばれる方法をtV模型と呼ばれるスピンレスフェルミオン模型を用いて精査した。この方法にある種の工夫を加えることで、相互作用を導入したときに比較的広いパラメタ領域において 数値的な厳密解(たとえば密度行列繰込み群による結果と比較して)と遜色ない精度でエンタングルメントスペクトルを再現することを明らかにした。さらに、この方法をハバード模型にも適用し、常磁性金属相、ダイマー相、モット絶縁相の性質、およびその相境界がエンタングルメントスペクトルの不連続な変化から検出することができることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在 DMETをより発展的に効率よく使って、信頼性のある結果を得るための手法の改良と発展を行っている。 この手法のボトルネックとして、波動関数を最適化するための指標があいまいである点が開発依頼取りざたされてきたが 現在この最適化なしで、よい物理量をえられる方法を考案し、その有用性を確認している。 今後、新たに発展させた手法を具体的にスピン液体系に適用する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在DMETをさらに改良して、密度行列を何度もパラメタを変化させながら再帰的に問題を解くプロセスを排して、一度で最適解を求める方法を開発している。 また他の手法と組み合わせながら より広範に多自由度系に適用していくことを考えている。特にダイマー系にスピン軌道相互作用を持ち込んだ系など、これまで平均場近似しか適用が難しかった問題に対するアプローチが可能になる。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスにより移動や議論が制限され、いくつかの共同研究の振興が思わしくなかったため本来使用すべき 計算機部品や旅費などが順調に消化できなかった。 次年度この問題をできるだけ解決し、1年以内にいくつかのこれまでの共同研究を消化して論文化するために使用額を持ち越した。
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Research Products
(16 results)