2022 Fiscal Year Annual Research Report
Designing emergent phases based on dimer structure in solids
Project/Area Number |
17K05533
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀田 知佐 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (50372909)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 有機導体 / 横磁場イジング模型 / 臨界性 / 動的臨界指数 / 緩和時間 / グラウバーダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は有機ダイマーモット絶縁体の誘電応答の臨界的なふるまいを計算したことが主な成果である。kappa-ET2Cu2CN3をはじめ複数の物質で、2010年以来誘電応答の温度依存性に、1桁以上の周波数の変化に対してピークがシフトする特異な振舞が観測され、リラクサー誘電体との現象論的類似性が議論された。これらの系はダイマー内に電荷が1個存在するもっと絶縁体であり、この絶縁体の電荷は局在しているもののダイマー内では量子力学的に揺らいでいる。この量子揺らぎとクーロン相互作用を取り入れた低エネルギー有効模型は三角格子横磁場強磁性イジング模型である。これは量子多体模型であるためそのユニタリダイナミクスに関してこれまで計算法が存在しなかった。今回、量子モンテカルロ法の連続時間アルゴリズムが、横磁場イジング模型に適用した際にグラウバーダイナミクスの要請する局所エネルギー構造を持つことに着目し、グラウバー型のダイナミクスの計算手法を開発した。この計算手法では、虚時間方向でスピンのそろったセグメントを一つの塊のスピンとみなしそのモンテカルロアップデートの過程を実時間とみなすことができる。そこでモンテカルロ時間方向の相関関数を量子モンテカルロ法で計算することで緩和時間が求められる。量子臨界点近傍で求めた緩和時間は有限サイズスケーリング側を満たし、動的臨界指数zを求めたところ3次元イジング普遍クラスの値とよく一致したため計算法の実効性が確認できた。この手法から求めた緩和時間と静的感受率によって、有機ダイマーモットkappa-ET2Cu2CN3 や類似物質でで観測され、長年その理由が議論されてきた、誘電応答の緩和の周波数依存性のある振る舞いが再現され、その由来が系の動的臨界性にあることが明らかになった。 以上、ダイマー内自由度の物理をダイナミクスの問題に最終年度に発展させることができた。
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Research Products
(3 results)