2017 Fiscal Year Research-status Report
微小な超伝導単結晶薄膜に閉じ込めた量子渦状態と制御
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17K05537
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
小久保 伸人 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (80372340)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡安 悟 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究主幹 (50354824)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 超伝導素子 / 量子渦 / メゾスコピック系 / SPMプローブ顕微鏡(SSM) / 低温物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、微小三角形超伝導体で予想される反量子渦・量子渦の分子状態に着目し、量子渦状態の制御に有効とされるアンチドットの導入と超伝導量子干渉計(SQUID)を使った量子渦の可視化実験を行った。反量子渦・量子渦分子状態は、試料中心(三角形の重心)に反量子渦が生じ、その周りを量子渦の三角配列が囲う。試料形状の対称性を考慮すると2種類の反量子渦・量子渦分子状態の出現が可能とされるが、実験的な直接観測は困難を極め、未だ実証に至っていない。反量子渦と量子渦の対消滅がその原因として考えられている。 本研究は、アンチドットで起こる量子渦のピン止め効果を利用することにより、反量子渦と量子渦の対消滅の制御を試みた。印加磁場の反転により反量子渦を誘起する方法を巧みに併用したところ、微小三角形超伝導体で期待される反量子渦・量子渦分子に相当した量子渦状態の可視化に成功した。微小超伝導体の長年の課題を解決する研究成果になると考えられる。 微小三角形超伝導体で予想される2種類の反量子渦・量子渦分子状態のうち、一方の分子状態の観測に至ったが、他方の分子状態の観測については課題として残された。解決には反量子渦と量子渦の共存状態が出現する詳しい条件やその物理的背景の理解が必要と考えられる。次年度は、量子渦状態に関する磁気相図を実験的に見出し、温度や磁場に対する反量子渦・量子渦分子状態の安定性を調べ、問題の解決につなげる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、微小三角形超伝導体で予想される反量子渦・量子渦の分子状態を見出すため、反量子渦と量子渦との対消滅を抑えるアンチドットを試料に導入し、走査SQUID磁気顕微鏡による量子渦状態の観察実験を行った。量子渦のピン止め効果を利用した磁場反転操作により、反量子渦と量子渦の分子状態に相当する量子渦状態の直接観測に成功した。本課題研究で目指す反量子渦・量子渦状態の可視化に成功したことで、当該年度の研究計画は“おおむね順調に進展している”と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
微小三角形超伝導体で観測した反量子渦・量子渦分子状態の出現条件を明確にするため、反量子渦と量子渦とが共存する温度・磁場の範囲の把握と量子渦状態間の転移を詳しく調べる。反量子渦を伴う量子状態に関する磁気相図の構築を目指す。
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Causes of Carryover |
学内の不用品を再利用することで、直接経費を節約し、未使用額が生じた。
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