2017 Fiscal Year Research-status Report
Phase ordering percolation and dynamic statistical law in multi-component superfluids
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17K05549
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
竹内 宏光 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 講師 (10587760)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 超流動 / 自発的対称性の破れ / 量子渦 / 秩序化動力学 / 浸透理論 / 動的安定性 / ドメイン形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究成果は主に以下の二つである. (i)量子性によって引き起こされる新たな動的スケーリング側の発見 (ii)一様超流体中の循環量子数2の量子渦に関する動的安定性の初解明 (i)について:2成分のボース・アインシュタイン凝縮体(BEC)が相分離する時間発展での動的な統計則を見出すことが本課題の目的である.はじめ,完全に混ざり合った2成分BECを用意すると,水と油のように2成分が相分離を起こし,それぞれの成分が占拠したドメインが多数出現する.ドメインのサイズは時間と共に増大すると共にその数を減少させる.その過程は古典系でも知られており,秩序化動力学の動的スケーリング則に従うことが経験的に知られている.本研究では,このドメインのサイズ分布が浸透理論に従う普遍的な振舞いと,量子系特有の振る舞いを同時に示すことを初めて明らかにした. (ii)について:一様な超流体における循環量子数が2の量子渦の動的安定性を大規模数値計算により理論的に検証した.これまでの量子流体力学の研究では,一様超流体中では量子数1の量子渦のみが安定であることが前提に,莫大な数の研究が実施されてきた.もし,量子数2以上の渦の存在が許されれば,それらの研究が土台から崩れ去ることになる.しかし,絶対零度において量子数が2以上の渦が不安定であることを示した研究はこれまで存在せず,理論・数値的困難から長年の未解決問題であった.本研究では,絶対零度の一様なBECにおいて,量子数2の量子渦が動的に不安定であることを初めて示した.また,この不安定化の過程において,準固有振動に類似した音波放射を引き起こすことを予言した. 以上の成果は国内・国際会議で発表し,学術論文として当該年度に公表済みである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記(i)の成果は,交付申請書の研究計画に記載した【1】の課題であり,計画通りに遂行することができた.一方,上記(ii)の課題を急遽実施したために,当該年度に実施予定であった【2】と【3】の課題は,次年度以降に実施することになった.これは(ii)の重要度を鑑みた結果である.上記の通り,(ii)は,量子流体力学の根底を揺るがしかねない極めて重要な問題であり,その解決は,本研究課題全体にとっても本質的に重要であった.また,【2】と【3】の課題について,次年度,専門家と議論のためにフランスを長期滞在する予定であり,それにより,効率的に研究を遂行できることが期待できる. 加えて,当該年度は量子流体力学に関する教科書の執筆が完了し,出版までこぎ着けることが出来たことは,今後の研究遂行を大きく後押しするものである. 以上を考慮すると,研究はおおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
上記(i)で得られた知見を礎として,実スカラー場の秩序化過程における動的な統計則に関して,より一般的な視点から新たな解釈を与えるべく,研究計画の課題【2】と【3】を理論・数値的に着手する.この方向性は,研究計画にも記載した【4】の課題の礎となる.また,2成分超流体の相分離過程を,より本質的に理解するために,ドメイン壁の長さ分布についての動的統計則も明らかにする. 研究計画に記載の【5】に関連して,フェルミ超流体中の非平衡ダイナミクスの理論・数値的手法の研究に着手する.これは【5】に関して当初の計画より繰り上げて遂行することになる.これに伴い,研究計画に記載の【4】の遂行は次々年度以降にずれ込む.これは【4】の礎となる【2】と【3】が次年度にずれ込んだことを考慮すると,有効な計画変更であると言える. 上記(ii)の研究は速報として学術雑誌に公表したが,次年度にフルペーパーを共同研究者と共に執筆すると共に,発展的な問題を取り扱う.これに伴い,当初の計画から大幅な計画変更が必要になるが,当該年度と同様に冷静にその重要度を見極め,臨機応変に研究を遂行する.
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Remarks |
(1)研究者個人のホームページ (2)研究者が所属する大阪市立大学の研究者総覧
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[Book] 量子流体力学2018
Author(s)
坪田 誠、笠松 健一、小林 未知数、竹内 宏光
Total Pages
338
Publisher
丸善
ISBN
4621302477
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