2020 Fiscal Year Annual Research Report
Phase diagram, electronic structure, and superconductivity of iron-based superconductors
Project/Area Number |
17K05556
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
寺嶋 太一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, グループリーダー (40343834)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 鉄系超伝導体 / 弾性抵抗 / ネマチック揺らぎ |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度実施したBa0.5K0.5Fe2As2、CaKFe4As4、KCa2Fe4As4F2のelastoresistance測定の結果を解析し、論文発表をした。これらはいずれも母物質のFeに対し0.25 個ホールドープした状態に当たる。しかしながら、鉄サイトの局所対称性はBa0.5K0.5Fe2As2のD2dから、CaKFe4As4、KCa2Fe4As4F2ではC2vに低下する。この結果、鉄の dxz, dyz 軌道の縮退がとける。他研究グループによるラマン測定の結果では、Ba0.5K0.5Fe2As2ではネマチック揺らぎの発達が観測されるのに対し、CaKFe4As4では観測されず、軌道縮退がとけて軌道起源のネマチック揺らぎが消失したと議論されている。 我々のelastoresistance測定では三化合物すべてで、低温でelastoresistanceの顕著な増大を観測した。Ba0.5K0.5Fe2As2、CaKFe4As4については既報と矛盾しない。KCa2Fe4As4F2については初めての測定データである。これまで鉄系超伝導体におけるelastoresistanceの増大はネマチック揺らぎの増大を示すと考えられてきたので、この結果はラマン測定の結果と矛盾するように見える。この矛盾を解消するための二つの仮説を提案した。(1)鉄サイトの対称性が低下し軌道縮退がとけた状態ではラマンのネマチック揺らぎに対する感度が低下する。(2)ネマチック揺らぎで無くとも、面内の電子状態に異方性をもたらす秩序の揺らぎであればelastoresistanceの増大を引き起こすはずで、elastoresistanceの増大が直ちにネマチック揺らぎを意味するわけではない。問題の決着のためには、これらの化合物についてラマン、非弾性中性子散乱などの測定が望まれる。
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Research Products
(2 results)