2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of all-electron first-principles method for core electron excitation spectra
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17K05565
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
野口 良史 静岡大学, 工学部, 准教授 (60450293)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 第一原理計算 / 励起状態 / 内殻束縛エネルギー / 多体摂動論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究計画書に従い、内殻電子励起スペクトルを高精度に評価することのできる第一原理計算手法の確立を目指し、手法開発及びプログラム開発を行った。本年度を含む過去2年間の本プロジェクトを通じて、すでにself-consistent GW(SCGW)プログラムは完成している。そしてその該当サブルーチンのCUDA化も完了しておりGPGPU上で計算を実行できるまでにプログラム開発が進んでいる。本年度ではまずSCGWをいくつかの分子へ適応しその性能評価を行った。内殻束縛エネルギーの絶対値評価を行った結果、従来のGW(いわゆるone-shot GW)法の結果から明らかな改善が見られることを確認することができた。しかし依然として実験値とは数eV程度の誤差が残ることも明らかになった。そこでさらなる高精度計算を実現するためのプログラム開発を行った。 これまでのGW計算では主に計算コスト削減の目的で、GW自己エネルギー演算子の評価に必要となるオメガ積分を数値的に行う代わりに、generalized plasmon pole(GPP)モデルを使用することで解析にオメガ積分を実行してきた。GPPモデルは価電子励起状態計算に対しては計算精度が詳細に検討されている手法であり、数値的にオメガ積分を実行した場合と大差ない結果が得られることがわかっている。しかし内殻電子状態計算におけるGPPモデルの正当性は必ずしも保証されていない。そのためGPPモデルの使用が最終結果にどれほど影響を及ぼすのかは未だにわかっていない。そこでGPPモデルを用いずにオメガ積分を数値的に実行するプログラムの改良を行った。プログラムへの実装は完了し、テスト計算を行うことができる状況にある。今後、このプログラムを用いて性能評価を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画書に従い、手法開発・プログラム開発を行ってきた。そしていくつかの少数原子からなる分子の内殻束縛エネルギーを計算した。実験値との比較において、これまでの手法から一定の改善を確認することができた一方で、未だに無視できない大きさの誤差(~数eV程度)が残ることも明らかになった。以上のことから、本手法を持っても内殻束縛エネルギーの絶対値評価には不十分である可能性が浮上してきた。この問題を解決するためにはbeyond GWを目指す必要があるかもしれないが、これは本プロジェクトの範疇を超える問題である。 研究計画書では本年度中に、Bethe-Salpeter方程式によるX線吸収スペクトル(XAS)及びX線発光スペクトル(XES)計算までを行う予定であったが、その前段階となる内殻束縛エネルギーの評価が十分にできていないことが明らかになったために、XASとXES計算は実施を見送らざるを得なかった。そのため本年度は、内殻束縛エネルギーの絶対値評価に集中することにして、より厳密にGW計算を行うことを目指し、プログラム開発を行った(研究実績の概要を参照)。プログラム開発はすでに完了しており、「厳密」なGW計算が可能になっている。今後はこのプログラムを用いて性能評価を行っていく予定である。結果を詳細に検討し、論文としてまとめる予定である。また得られた知見を今後のbeyond GW法開発につなげるつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画書に従えば、本プロジェクト最終年度となる今年度は2電子励起過程のオージェスペクトルの計算に取り掛かる事になっていた。しかしすでに「現在までの進歩状況」で述べたように、その前段階となるGW法による1電子励起スペクトル(内殻束縛エネルギー)の絶対値評価において本手法では数eV程度の誤差を生じさせてしまうことが確認された。昨年度は、より厳密なGW自己エネルギー演算子の評価を目指して、GPPモデルを使用せずにオメガ積分を数値的に実行するプログラムの開発を行った。今後その性能評価を行っていく予定であるが、それでもなお無視できない程度の誤差が残ることが予想される。この問題を本質的に解決するためにはbeyond GWを目指す必要があり、明らかに本プロジェクトの範疇を超えたテーマである。しかしその場合でも結果を詳細に検討し、国内外の学会で発表するとともに、論文にまとめる予定である。また本プロジェクトを通じて得られた知見を、今後取り掛かる予定であるbeyond GW法の開発に活かす予定である。
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Causes of Carryover |
「研究実施の概要」で示したように、本年度はGW法による内殻束縛エネルギーの絶対値評価を行った。しかし研究計画を立てた段階では予想できなかったこととして、本手法が数eV程度の誤差を生じてしまうことが明らかになった。そのため、研究計画書で計画していたX線吸収スペクトル(XAS)およびX線発光スペクトル(XES)の大規模計算を見送らざるを得なくなった。代わりにプログラム開発及びそのテスト計算を集中的に行った結果、全国共同利用施設に設置されているスーパーコンピュータ使用料を減額することとなった。また学会出席のために計上をしていた旅費に関しても、執行する機会がなかったために2019年度に繰り越しとなった。
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Research Products
(3 results)