2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of full-potential Korringa-Kohn-Rostoker Green's function method and its applications
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17K05566
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
赤井 久純 東京大学, 物性研究所, 特任研究員 (70124873)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 全電子第一原理計算 / フルポテンシャルKKR法 / 密度汎関数法 / グリーン関数法 / コヒーレントポテンシャル近似 / 計算物質科学 / 計算機マテリアルデザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
コリンハ・コーン・ロストーカ(KKR)法は全電子第一原理電子状態計算が可能な方法であるが、フルポテンシャル化が困難である。現在実現されているフルポテンシャルKKR法は空間をボロノイセルに分割し、ボロノイセル自身を表す形状関数を球面調和関数で展開するものである。この方法は結晶構造が複雑になると非常に計算が重くなる上に、ボロノイセルが幾何学的な特異点を持つため精度を維持するのが難しく、また格子緩和によるエネルギー計算にも大きな困難が伴う。本研究の目的はこのような欠点を含まないフルポテンシャルKKR法を開発することである。本年度は平面波基底を用いた対角化によって構造グリーン関数を構成するためのコード開発を行った。しかし、この方法によりマフィンティンKKRで用いられる空格子に対する構造グリーン関数に匹敵するだけの精度を出すことは大変困難であることが明らかになってきた。空格子の場合にはその解析的な形は分かっており、その数値計算にはエバルト法を用いることによって事実上、対角化において無限個の基底をとったものと同等の精度が得られるが、対角化では無限個の基底をとるわけにはいかず、数百~千個の平面波基底に制限せざるを得ないからである。このような事態を予想して用意してあった、第二の方法である格子間隙位置のポテンシャルを摂動的に取り扱う方法に方向転換を行い、その方法を用いた計算のための計算機コードの開発を開始した。また、第二の方法と全エネルギーの計算においては精度的にあまり劣ることのないと考えられる、実用的な第三の方法として空格子を参照ポテンシャルに用いながらも電子分布の形状には近似を入れない(フル・チャージ)でエネルギーを計算する方法を考案して、その計算機コードの開発も同時に開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた,対角化によってフルポテンシャルの構造グリーン関数を求める方法(第一の方法)に、数値計算上の困難(必要とする計算資源の大きさが当初予想していたものより大きく.得られるアウトプットに見合わない可能性がある)があることが明らかになってきたために、この第一の方法についても引き続き開発を続けているが,第二およびそれを補完するための第三の方法に軸足を移した。そのためにコード開発が本年度取り組んだが本格的なテストに至らなかったが、その可能性については当初から考慮しており、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ひきつづき対角化によってフルポテンシャルの構造グリーン関数を求める方法(第一の方法)の開発はすすめるが、摂動による方法(第二の方法)、および空格子を参照ポテンシャルに用いてフル・チャージを用いて全エネルギーを計算する方法(第三の方法)に主力を移して開発を進める。これらによる成果を出し、その実用性を明らかにした上で、それらを担保するために、最も精度が高いと言える第一の方法による計算を実施し、それによって代替法である第二,第三の方法の正当性を評価する。
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Causes of Carryover |
本年度はアルゴリズムの整備および異なったフレームワークに基づく2個の計算機コードの開発とそのテストに時間を費やしたために本格的な大規模計算に進まなかった。そのため本格計算のために予定していたクラスター計算機エレメントおよびメモリの購入を見送った。次年度の早い段階にクラスター計算機エレメントを購入し本格計算のために資するとともに、国際協力研究を行なっているルートウィッヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンの小倉昌子博士、関連するテーマにおいて共同研究を行っているヨハネス・ケプラー大学リンツのマーチン・ホフマン博士との打ち合わせのための海外出張を予定している。また、国際会議(JEMS2019およびMMM2019)出席のための旅費を計上している。
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