2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K05567
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀 健太朗 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (30535042)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ゲージ理論 / Dブレーン / 次数制限則 / サイバーグ双対性 / モノドロミー |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲージ化された線形シグマ模型(GLSM)におけるDブレーンを解析することにより、これまで手の届かなかった「非幾何学相」や「強結合相」における超弦理論の基本的な理解を得ることがこの研究の目的である。そのために、異なる相を道で繋いだときDブレーンがどのように輸送されるかを決定する「次数制限則」を得ること、また、強結合相においてDブレーンが低エネルギーでどのように振舞うかを理解すること、が重要である。特に、弱結合相と強結合相の二つの相を持ち、共に3次元カラビ・ヤウ多様体を的とするシグマ模型が低エネルギーで現れるようなGLSMにおいてこれを実行することが課題であった。平成29年度から令和元年度にかけて、そのようなGLSMの最初の例であるRodland模型におけるDブレーンを研究し、次数制限則を得ることに成功している。 令和2年度はRodland模型の研究を通して開発した手法が他の例でも適用できるかを確認するため、GLSMのもう一つの例におけるDブレーンの研究を行った。この例は数学者のM. Miuraが2013年に発見した3次元カラビ・ヤウ多様体の組を二つの相で実現するGLSMである。この「Miura模型」においても次数制限則を得ることに成功した。これは本研究で開発した手法の汎用性を示すものである。また、その応用として特異点を回るループに沿った輸送の効果(モノドロミー)を決定した。これには強結合相において低エネルギーで空となるDブレーンの同定が必要であるが、この作業においてはMiura模型はRodland模型の時よりも非自明であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
「研究実績の概要」で述べたようにDブレーンの輸送に関する次数制限則を得る方法の開発には成功しているが、本研究のもう一つの課題である「サイバーグ双対性のもとでのDブレーンの対応関係」については研究が滞っている。これを実行するために必要なのが、「2次元ゲージ理論を境界を持つ面上に定式化するとき、境界上の自由度はゲージ変換のもとでどのように変換するか?」を理解することである。これについてはボゾニックな理論においては完全な理解を得ているが、それをフェルミオニックな理論に拡張することがまだ成功していない。理由としてはそのために必要な数学的知識を得るために想定以上の時間がかかっていることがあげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
Miura模型において、強結合相で空となるDブレーンが弱結合相でどのようなベクトル束の複体に対応するかを同定し、これを用いてDブレーンのモノドロミーを幾何学的に表現する。また、フェルミオニックなゲージ理論における境界上の自由度のゲージ変換性についての完全な理解を目指し、それをもとに「サイバーグ双対性のもとでのDブレーンの対応関係を明らかにする」という目的を達成したい。さらに、得た対応関係を用いてRondalnd模型やMiura模型の強結合相におけるDブレーンの幾何学的な意味を理解したい。
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Causes of Carryover |
計画では、サイバーグ双対性のもとでのDブレーンの対応関係を議論するためにJ. Rennemoを、代数幾何学における射影双対性とサイバーグ双対性の関係を議論するためにA. KuznetsovもしくはN.C. Leungを、それぞれ招待する予定であったが、準備的研究に想定以上の時間がかかったため、実行することができなかった。今年度は上記の研究課題についてRennemo, Kuznetsov, Leungと、またRondalnd模型やMiura模型の強結合相におけるDブレーンの幾何学的な意味を理解するためにEagerを含む共同研究者と議論する予定である。新型コロナウィルスの影響によりこれらは主にオンラインで行う予定である。繰越金は通信を円滑に行うために使用するつもりである。
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