2018 Fiscal Year Research-status Report
不確定な環境系と相互作用している量子系に対する最適な量子状態推定法の開拓
Project/Area Number |
17K05571
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
鈴木 淳 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (70565332)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 量子状態推定 / 撹乱パラメータ / 量子ノイズ / 最適な測定 / 量子Fisher情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、撹乱パラメータが存在する場合に与えられた未知の量子状態をできるだけ正確に推定するという統計学的問題について、推定誤差を小さくできるような最適な測定に関する研究を行ってきた。 初年度に引き続き、最適な測定を導出する問題を数理統計学の実験計画法として定式化し、いくつかの問題について適用し、通常の古典的なモデルに対する解析と量子系に特有な問題について議論をした。特に撹乱パラメータが存在する場合の最適な量子測定法が局所最適な解であるため、古典的な方法の1つである適応的な計画法が有効ではないような重要な例を発見し、その詳細について調べたことは重要な成果である。次に、古典統計学では非常によく知られたKiefer-Wolfowitzの等価定理を量子系に拡張し、量子2準位系で一般定理として示した。実験計画法で知られている様々な最適基準に基づいた最適な測定法を解析的に求め、それらの性質を比較し、ロバスト性についても明らかにした。 本年度に新しく取り組んだ研究としては、与えられた統計モデルに関する分類である。量子状態に関する統計モデルの推定誤差が解析的に量子Fisher情報を用いて表現できるための必要十分条件を同値な条件としていつくか導出し、その統計的な性質および情報幾何学的な性質について調べた。また、得られた一般定理を量子2準位系や一様地場中の電子の位置の推定問題といった具体的な例に適用し、理想的な量子状態が推定しやすいモデルであっても量子ノイズの影響を受けた場合にその性質が大きく異なる例の解析を行った。これらの結果は量子ノイズの影響が小さい場合にも完全に無視できず、正しく評価する必要があることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画にある、量子系での撹乱パラメータ問題に関する学術論文は十分な議論を含め、校正したした論文を最終年度に投稿する予定である。昨年度から取り組んでいる実験計画法に基づいた最適な量子測定法の導出については、一定の研究成果が得られており、研究会2件の発表、学術論文を2本執筆し、最終年度初めに投稿する予定である。 新しく取り組んだ量子系での統計モデルに関する分類については研究会、国際会議で発表しており、結果をまとめた論文を投稿する予定である。 昨年度予定していた論文投稿については、共同研究に発展したこと、より多くの研究成果を追加したこともあり、投稿が最終年度になったが、いくつかの研究成果は国際共同研究を含む共同研究として発展したことも成果の1つである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画書で予定していた複数の量子ノイズモデルの比較については、当初の研究計画の方法では最適な測定の導出につながらないことが分かり、新しく取り組みはじめた実験計画法に基づいた解析方法を適用する。これにより本研究の目標である、推定したい量子系が未知のノイズの影響を受けている状況における、最適な測定と誤差限界に関する一般的な議論を行うための、理論枠組みを作ることにつながる。また、得られた一般的な理論結果をいくつかの具体的な物理モデルに応用し、その有効性についても議論する。 最終年度の課題としては、得られた成果をまとめて論文投稿し、また国際会議で発表することも重要である。
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